指が動きにくいと感じていたら、それは「加齢によるもの」ではない可能性がある。

「デュピュイトラン拘縮」という名前を聞いたことがある人がどれくらいいるだろうか?

 これは、手のひらから指にかけてしこりができ、徐々に指が伸ばしにくくなる病気だ。

「患者数が非常に少ない疾患」と思う人がほとんどだろう。

 ところが、オランダのデータでは50歳以上の男性の4人に1人、女性の6人に1人が該当するという。

 日本では、群馬県だけでのデータだが、同じく50歳以上の男性の10人に1人、女性の100人に4人という確率。決して「珍しい病気」とはいえない。

 この疾患治療の第一人者である名古屋大学医学部手の外科教授・平田仁医師によれば、「年のせい」と思っている人や、複数の医療機関を回っても診断名がついていない人が多いという。

「進行すると指が拘縮して動かなくなるので、自活が不可能になります。放置してはいけない疾患です」

 知っておくべきことを平田医師に聞いた。

■発症年齢 

 報告されているのは、50歳以上。高齢者になるほど患者数が増える。

「高齢になると転倒しやすくなる。そういう時、この疾患があれば体を支えるために物をパッとつかめません」

 結果、転倒して骨折し認知症発症……という展開も容易に考えられる。

■症状 

 指を伸ばしにくくなるので、ドアノブを回す、洗顔をする、ボタンを留める、パソコンの操作をする、手をポケットに入れる、車の運転など、日常生活のあらゆることができにくくなる。痛みは通常ない。

「手の薬指や小指に多く発症しますが、足の指や、日本では報告例がないものの、男性器の発症例もあります」

■原因 

 はっきりしたことはわかっていない。ただし、発症しやすい人がいる。

 要注意なのは、家族に同じ病歴がある人だ。海外のデータでは、4割に家族歴がみられた。ただし、日本では「気付かれていなかった」ケースが多い。つまり、「親は違ったから」と思っていても、単に「診断名がついていなかった」ということもある。

 手に外傷のある人も発症しやすい。

「さらに、糖尿病、飲酒量が多い人も発症しやすく、再発率が高いことがわかっています」

 糖尿病の人はデュピュイトラン拘縮の疑いを常に念頭に置いていたほうがいいかもしれない。ただし、糖尿病の専門医も深い知識がない場合がある。

■治療 

 治療法はかつては手術しかなかった。

「非常に難しい手術です。スペシャリストが行っても、10人に1人は神経障害が起こり、術後の合併症も多い。指を伸ばせるようになるまで、特殊な機器を使った痛みを伴う処置が必要でした。そこまでやっても、5年後には4人に1人が再発するのです」

 ところが2015年9月以降、注射1本で症状が改善される治療が登場した。薬剤がしこりを溶かし、24時間後には指を伸ばしたり縮めたりといった処置が行われる。

「手術と比べると、低侵襲で患者さんへの負担がとても軽減された。すべての人に行えるわけではないが、画期的な治療法なのは確かです」

 国内の治験では、有効率は85・7%。98%に副作用がみられるが、軽度〜中等度で、注射後すぐに表れるため大事には至っていない。

「再発リスクはありますが、低侵襲なので繰り返し行える。また、万が一手術が必要になっても、注射が手術を邪魔しません」

 現在、手外科専門医で専門の講習を受けた医師のみ施術可能だ。