米大リーグのダルビッシュ有はドジャースに移籍後、初勝利を飾った。球団の評価は上々だが、“外野”が騒がしい。テレ朝系のバラエティー番組が、東北高校時代のダルが2004年の夏の甲子園3回戦で千葉経大付とぶつかった一戦を読唇術で分析した件だ。

 十回裏2アウト2ストライクと追い詰められた場面で、打席を外したダルが仲間に滑り止めを求めると、「最後かな。ドキドキするわ」とつぶやき、打席に戻ると、「クソー、終わらせねぇぞ コレ!」と叫んだと読み取ってみせた。ところが、ツイッターで番組を知ったダルは、「絶対言ってないです」と完全否定したのだ。

 そこで、気になるのが読唇術の“正答率”だ。明大講師の関修氏(心理学)が言う。

「番組で読唇した人が、2アウト2ストライクの状況を知っていたのかどうか分かりませんが、もし知っていたとすると、それがバイアスになり、正しく読み取れなくなる可能性があります。バイアスがない状況で、きちんとした技術をもった専門家が読唇すれば、6〜7割の精度はあります」

 発音してみると分かるが、「た」「だ」「な」は同じ口の動きをする。それを読唇しても、読み取れるのは母音の「あ」だけ。子音は何か分からない。「たばこ」「たまご」「なまこ」も同じ動きだ。こういう言葉を、「同口形異音語」と呼ぶが、通常は文脈で判断できる。

 たとえば、妻に「夕飯の支度するから、○○○買ってきて」と言われたら、普通は「たまご」と解釈するはず。特殊な食文化のエリアなら「なまこ」もなくはないが、「たばこ」はありえないだろう。

「読唇術がよく訓練されるのは、ろう学校です。生徒は、その時々の口の動きを理解すると同時に、前後の文脈や話の流れから言葉を読み取る訓練を行います。読唇術は、その2つがあって成立するのです」

 ダルは読唇術に不信感を抱いているようだが、本当のプロが読唇したら結果は違うかもしれないだろう。