いくら糖質の多い食品は太ると知っていても、どの食品に、どれだけ糖質が含まれているか分からなければ肥満を防ぐことはできない。まして、痩せようと思うなら、どの加工食品に、どんな成分が、どれだけ入っているかを示す食品表示を正確に読み取る必要がある。そうでなければ、1本の飲料や1個のパンがそれまでのダイエットの努力をムダにしかねない。そこで、正しい食品表示の読み方を早稲田大学持続型食・農・バイオ研究所重点領域研究機構招聘研究員の古谷彰子氏に話を聞いた。

「消費者庁が管轄する食品表示にはいくつかのルールがあります。その食品に含まれる炭水化物、脂質、タンパク質、エネルギー、食塩の割合、原材料名をその量の多い順番に表示すること、さらに一番多い原材料が加工食品では製造地が、生鮮食品では産地が表示されることなどがあります」

 多くの人はこのルールを知らず、さまざまな大事なことを見落としてしまう。例えば、ジャムパンやあんパンなどの菓子パンの食品表示を見ると、興味深いことが分かる。

「本来、パンであれば原材料は小麦粉が原材料名のトップに表示されるはずです。ところが、ジャムパンやあんパンといった菓子パンでは、砂糖やイチゴジャム、つぶあんといった小麦粉以外の原材料名から表記されることが少なくありません。こうした菓子パンはパンというより、パン入りの砂糖やジャムやつぶあんを食べているようなものなのかもしれません」

 チョコレートの食品表示も意外なことに気付かされる。本来チョコレートの原材料の一番最初の表示がカカオマス(カカオ豆の殻を取り、殺菌・焙煎しペースト状に固めたもの)であればカカオが最も多いチョコレートだ。ところが価格の安いものであればあるほど、原材料名の表示トップが砂糖になるという。

「つまり、消費者はチョコを食べているつもりでも、安いチョコは砂糖を食べているようなものなのです。カフェオレ・カフェラテと表示されている飲み物も、原材料名の最初に生乳、コーヒー、ブドウ糖果糖液糖と書かれているものでは違います」

 ブドウ糖果糖液糖とはサツマイモやジャガイモ、トウモロコシのでんぷんから作られる食品添加物のこと。別名・異性化糖(正式名称は高フルクトースコーンシロップ)という。

「ブドウ糖から果糖に変化することを異性化と言いますが、その部分が50%未満ならブドウ糖果糖液糖で、50〜90%は果糖ブドウ糖液糖、90%以上を高果糖液糖と言います。これらの異性化糖に10%以上の砂糖を加えたものが砂糖混合異性化液糖です。ご飯などを体内で分解して得るブドウ糖と違って、最初からブドウ糖と果糖に分離しているブドウ糖果糖液糖を取ると、体内で分解されることなく血液に送られるので、血糖値が急上昇します」

 結果、吸収の良い果糖はそのまま中性脂肪のもとになる。消化、分解の過程がいらない分、幸福感が増し、飲み過ぎてしまい、肥満につながり、心臓病や脂肪肝のリスクを高めてしまう恐れがある。

 ちなみに、市販のコーヒーは景品表示法の「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」により、「コーヒー」「コーヒー飲料」「コーヒー入り清涼飲料」などに大別されている。その差は内用量100グラム当たりの生豆使用量の違いにある。「コーヒー」は5グラム以上、「コーヒー飲料」は2・5グラム以上5グラム未満、「コーヒー入り清涼飲料」は1グラム以上2・5グラム未満を指すという。

 通常、コーヒーショップで出されるコーヒーは、140グラム=140ミリリットルの水に対して10グラム以上程度の生豆を使っているとされる。その意味では、市販のコーヒーは限りなくアメリカンと言えそうだ。

「それでもおいしく感じるのは、コーヒーの香りを香料で、甘味を砂糖などで補っているからです。実際、食品表示を見ると、コーヒーと並んで香料などと書かれているものが少なくありません」

■「カロリーゼロ」「控えめ」の意味

「食品のカロリーに関する表示のルールは『健康増進法』で決められています。よく、『カロリーゼロ』や『ノンカロリー』と書かれた食品や飲料が販売されていますが、これはカロリーがまったくないという意味ではありません。食品100グラム当たり5キロカロリー未満(飲料の場合は100ミリリットル当たり5キロカロリー未満)にエネルギーを抑えていれば表示できることになっています。一方、『カロリーオフ』『カロリー控えめ』は、食品100グラム当たり40キロカロリー以下(飲料の場合は100ミリリットル当たり20キロカロリー以下)であれば表示できます。つまり、カロリーオフの飲料を500ミリリットル飲めば、100キロカロリーを摂取することになるのです」

 本気で体重を維持したり、痩せたりしたいと思うなら、ご飯やおかずの栄養を知るだけでは足りない。加工食品の食品表示を読む力もしっかり養うことだ。