【トランプに握られた日本人の胃袋】#17

 昨日は、日本が中国に次ぐ遺伝子組み換え(GM)作物の輸入大国であることを書いたが、ほとんどの人は自分がGM食品を食べている意識はないだろう。なぜなら「遺伝子組み換えでない」という表示は見ても、「遺伝子組み換え」という表示は見たことがないからだ。

 日本の輸入トウモロコシは約1600万トン。うち9割がアメリカに依存し、ほとんどは遺伝子組み換えだ。結果、日本は世界一のGMトウモロコシの輸入大国である。

 輸入トウモロコシは、そのうち65%は飼料用で、35%(約560万トン)は人間の口に入ると書いた。ただし、そのまま食べるのではなく、57%はコーンスターチ(でんぷん)になる。重量にすると約320万トン。ものすごい量だ。残りはアルコールやコーンフレークなどになる。ちなみに現在、ビールメーカー各社の発泡酒は、遺伝子組み換え由来のコーンスターチから造られている。

 コーンスターチがこれほど使われるのは、ケーキ、アイスクリーム、ソース、スープ、ビスケットなど、あらゆる食品に使われるからだ。菓子などのラベルに「ぶどう糖果糖液糖」と表示されているのを見たことがないだろうか。この原料の9割がコーンスターチだが、商品には「遺伝子組み換え」の文字はない。

■消費者に極力“見せない”仕組みの数々

 では、GMトウモロコシはどこかに消えたというのか。そこには巧妙な仕掛けがある。

 まず、家畜のエサには表示義務がないから、GMトウモロコシやGM大豆で育てた牛や豚の肉、さらに牛乳や乳製品なども表示しなくていい。

 油や醤油のような液体も、検査できないという理由で表示義務なし。コーンシロップや果糖、ぶどう糖、水あめなどの甘味料もそうだ。

 加工食品で表示義務があるのは、大豆が原料の豆腐や納豆など、トウモロコシ原料のコーンスナックやポップコーンなどといった33の食品群のみで、それ以外は対象外。なぜかコーンフレークも表示義務がない。

 それだけではない。加工食品で表示義務があるのは原材料のうち上位3品目だけ。たとえばチョコレートの原材料はカカオ、小麦粉、砂糖だから、4番目にGMトウモロコシ由来の水あめが入っていても表示する必要はない。子供が好きな菓子類のラベルを見ると、半分以上がGM作物からできているが、こうした抜け穴のせいで表示されない。

 さらに昨日書いたように、日本は「重量の割合が5%以上」にしか表示義務がないから、コーンスターチでも少量ならOKというわけだ。この国は表示義務があるように見せながら、極力見せない仕組みができている。誰が考えても、変だろう。

(奥野修司/ノンフィクション作家)