【牛次郎 流れ流され80年】#33

 今年の1月、牛次郎は久しぶりに小学館の新年会に顔を出したという。だが、知っている人はほとんどいなかった。

「知った顔は、さいとう・たかをさんぐらい。それで挨拶したら『おう、あんた誰?』って聞くから『牛次郎です』って言ったら、『牛ちゃんかよ。老けたな』って。そう言うさいとうさんも、革のベルトとかしてたけど、もう痛々しくてね。あの人はプロダクションがあるから、自分は首から上を描いていればいいんだろうけど、それだって『疲れたから、誰かやってくれねえかな』ってぼやいてた。『それやったら、さいとう・たかをの名前じゃダメだってことになるよ』って言ったら、『そうなんだよなあ〜』って。笑っちゃうよな」

 さいとうは牛次郎の3つ上で83歳だが、今も漫画家として現役だ。デューク東郷が活躍する代表作「ゴルゴ13」は、単行本が198巻まで発売されている。200の大台も目前だ。

 その一方で年齢は下だが、さっさと冥土に旅立った者も少なくない。今年の5月に77歳で亡くなったジョージ秋山もそのひとり。「浮浪雲」や「ピンクのカーテン」で知られる人気漫画家だ。

「あいつは北関東の育ちでなまりが強くてね。人前ではあんまりしゃべらないし、集まりにも出てこない。内向的な感じだった。それでも俺とは気が合って、『お兄ちゃん、お兄ちゃん』って慕ってくれてたよ。若い時は顔が似てるって言われてたから、親近感が湧いてたんだろうなあ〜。ある時、一緒に新宿に飲みにいったら、店の人に『牛さん、牛さん』って呼ばれててさ。なんだよって思ったら、レミーマルタンのボトルに『牛次郎』って書いてあるんだよ。しょうがねえから、次に俺が行った時は『ジョージ秋山』でボトルを入れた。店の人だって入れ替わってることを知ってたのかもしれないけど、そんなふうにして遊んでたなあ」

 ある日、「車を買ったんだよ。スポーツカーだよ」と電話をしてきたので、家まで遊びにいったところ……。

「椎名町(東京・豊島区)だったかな、池袋のちょっと先のマンションに住んでたんだけど、車庫を見せてもらったら真っ赤なベンツのオープンカーがドーンと入っててたまげた。『すごいの買ったね、ちょっと乗してくれよ』って言ったら、『いいけどね、ちょっとまずいんだよ』ってモジモジしてる。なにがまずいのか聞いたら、『まだ免許を持ってないから』って。それでド派手な高級車を買っちゃうんだから、かなりの変人だよな。その後も運転しているところを見たことはないけど、ちゃんと免許取ったのかな、どうなんだろう。あいつのやることは分かんねえからさ」

 一風変わった漫画家は、ほかにも大勢いた。=敬称略、つづく

(取材・文=二口隆光/日刊ゲンダイ)