4月1日から高齢者の希望者に70歳まで働く機会を確保することが企業の努力義務になった。

 安倍晋三前首相時代の2020年2月に閣議決定された“70歳までの就業機会確保を企業の努力義務とする”改正高年齢者雇用安定法が施行されたのだ。

 これまでの高年齢者雇用安定法では、企業は希望者全員を65歳まで雇用することが義務付けられていた。改正高年齢者雇用安定法では、60歳まで雇用していた事業者に対し、従来の65歳までの雇用確保から①70歳までの定年引き上げ②定年制の廃止③70歳までの継続雇用制度の導入。さらに高齢者が希望するときは④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、からいずれかを講ずる努力義務が新設されたのである。

 厚生労働省が今年発表(1月8日)した20年「高年齢者の雇用状況」の調査では(301人以上規模の大企業1万7070社対象)、65歳定年企業は11・9%、66歳以上働ける制度のある企業は28・2%、70歳以上では26・1%、定年制廃止企業は0・6%だった。いずれも前年比増加し、すでに65歳定年延長から70歳まで働く社会に進みつつある。

 少子高齢化の急速な進行で人口が減少する中、経済社会の活性化を維持することを挙げ、65歳からさらに70歳まで働かされることになるということだ。

 65歳定年制度のあるサントリーホールディングスは、昨年4月から定年を迎えた社員が70歳まで働ける再雇用制度を導入している。制度の内容は1年契約で最長5年、勤務形態は基本的に週3日、1日6時間労働の非常勤嘱託社員となる。

 60歳定年のトヨタ自動車は、定年後1年ごとの再雇用契約で65歳まで嘱託社員となる。

「70歳まで雇用延長の話は人事部からまだありません。嘱託社員の年収はそれまでのほぼ半分、年金は企業年金を含み約40万円。うちは社員の給与が高いですから定年引き上げや70歳までの継続雇用は人件費の負担が大きくなる。総人件費を増やさないため今後給与や年金は減らされるでしょうね」(同社嘱託社員)

 70歳までの雇用確保を進める政府の狙いを中央大学文学部の山田昌弘教授がこう言う。

「70歳まで働かされるということは、年金の受給開始も70歳からになるということがセットだということです。年金のカットが政府の狙いでしょう」

 コロナ禍の影響を受け経営破綻企業が急増し、早期退職募集は111社、2万3693人(20年度=東京商工リサーチ調査)とリーマン・ショック以降最大の規模に拡大している。今回の70歳まで雇用延長は、年金カットとともに、政府自民党の秋の総選挙対策も透けて見えるのだが。

 (ジャーナリスト・木野活明)