【松坂、筒香を育てた小倉清一郎 鬼の秘伝書】

 先月いっぱいで山梨学院での臨時コーチの契約が終了した。

 現在は古巣・横浜(神奈川)のグラウンドに顔を出して指導している。その横浜が10日、「神奈川県秋季大会の出場を辞退する」と発表した。理由は野球部内で複数人の新型コロナウイルスの陽性者が判明したためだ。5日の初戦に勝利し、11日に3回戦が予定されていたが、来春のセンバツ出場への道は断たれた。

 現在は活動休止中。夏の甲子園に出場した有望な1年生もいるが、センバツ出場は難しいと感じていた。

 理由は「勝てるキャッチボール」ができないからだ。普通のものではなく、フットワークを使ってすぐに投げる。これをやらない。何歩か反動をつけて投げている。実戦では体勢が悪く、反動をつけられない状態で送球することが圧倒的に多い。実戦を想定できないチームは勝てない。この前、カミナリを落としたばかりだった。

「もう一度、練習を見直して来夏に勝負しよう」

 練習が再開したら、そう声をかけようと思う。

■カーブの方が金属バットの芯を外せる

 夏の甲子園大会を見ていてプロ野球の悪い影響があると感じた。

 最近はプロの投手がこぞってカットボールを投げるようになった。直球と近い球速で少しだけ変化させ、木製バットの芯を外すのが狙いだ。しかし、金属バットだと危険な球種になる。芯の部分が木製より大きいため、少しずらしても飛んでしまうのだ。

 バッテリーは使い方も分かっていない。例えば135キロの直球に相手が振り遅れているとする。それなのに、125〜127キロのカットボール、スライダーのような速い変化球を投げれば、ちょうどタイミングが合ってしまうことがある。先の甲子園で弘前学院聖愛(青森)の2年生エースは石見智翠館(島根)打線を直球で押していたが、カットボールを合わされ、決勝2ランを浴びたのが、まさにそうだ。

 桑田(巨人投手チーフコーチ補佐)や工藤(ソフトバンク監督)が高校時代から投げていた落差の大きなカーブが有効だ。最近は投げる投手が少ない。カーブの方が金属バットの芯を外せる。

 甲子園に出場する強豪校でも、あまりできていないのが「バントの構え」である。構える瞬間、右打者なら軸になる左手をグリップエンドから20〜30センチも上を持っている選手が多いことに驚いた。この方がやりやすいように感じるからだが、飛びつかないといけないスクイズの時にはバットが届かない。このままやると、グリップエンドが腹に当たってしまうため、バスターもできない。相手に「バントしかない」とバレてしまうのだ。持っていいのは、せいぜいグリップエンドから5〜6センチ。しっかりした野球をやる明徳義塾(高知)あたりはできていたが、こういうところでも甲子園のレベルが年々落ちていると感じる。

(小倉清一郎/元横浜高校野球部部長)