夏場を過ぎても大混戦が続くJ2に、小粒だが光り輝く新星が登場した。5日の湘南ベルマーレ対松本山雅戦で鹿児島・鹿屋体育大MF松田天馬(4年)が、湘南の一員としてJリーグ初出場初先発のピッチに立った。7月28日に湘南への来季の新加入とJFA・Jリーグ特別指定選手への承認が決まったと発表されてから、わずか8日後のJリーグデビューとなった。

 164センチ、62キロの小さな体ながら、開始1分2秒に放った両軍最初のシュートで、早くも実力の片りんを見せた。松田は松本のペナルティーエリアに進入し、DF2人の間でパスを受けると、かわして左足を鋭く振り抜いた。

 相手ゴール前にわずかなスペースがあれば、えぐるように跳び込む。2、3人がかりでつぶしに来るDFの間の、わずかなスペースでも、小さい体を生かして速いターンや切り返しで振り切ることが出来る。そこからシュートを打っていく左足の振りもコンパクトで鋭い。「そこが自分の持ち味です」と語るように、小さな体を利点として生かす術を知っている。

 運動量も多く、自陣ゴール前から相手ゴール前まで精力的に走り回り、体を張った守備もいとわない。ボディーコンタクトの際に手を広げるなど、工夫して体格差を補っている。

 18日に台北で開幕する第29回ユニバーシアード大会に出場する日本代表に選出され、19日にマレーシアとの初戦を迎える。7日から福島県いわき市でスタートした合宿に合流したが、それまで2週間、湘南の練習に参加した。湘南は伝統の縦への速い攻めに加え、曹貴裁監督(48)が求めるサッカーは攻守に連動性が高く、Jリーグでも屈指の走力が求められるが、ピッチ上のプレーからも2週間でチームの戦術を一定以上、理解しているのは明らかだった。試合後、「(走ることが)分かっていて、このチームに来ている。その分、しっかりやっていきたいし併せて自分の特徴を出していきたい」と語る言葉に驚く記者もいた。

 松田を先発に抜てきした曹監督は「強化指定の選手が、J2の半ばのタフな時期に試合に出るのは僕も監督(のキャリア)の中で初めて。だけど本当に予想どおり…ちょっと前半ボールを2、3回、失ったんですけど、ちゃんと学んで後半はしっかり入った。我々のチームに加入する選手としては非常に楽しみだなと思いました」と絶賛した。

 若手選手が活躍しても、今後を考え、時に厳しい言葉を投げかけて叱咤(しった)する曹監督だが、松田の将来に期待を寄せた。

 曹監督 小さくてもサッカーが出来る、そういうタイプの選手。これから続く子どもとか、我々のアカデミー、ユースの模範になるような選手になってほしい。高校、大学でメンタルの部分も鍛えられて、全然、ビビらないことは証明された。ユニバーシアードの代表で台北に行きますけども、時間があれば我々のチームに入って、また力になってほしい。

 松田は、試合中の曹監督からの指示について聞かれ「DFの間でボールを受けろと指示がありました。そこが自分の特徴だと思います」と笑みを浮かべた。そして「プロは練習の強度が違い、質も高くついていくのに必死。僕は小さいし、あまり特徴がないんで、そういうところ(チームの戦術理解)をして合わせていかないと、やっていけない。全て理解できているとは言えないと思いますけど、吸収してやっていきたい…まだまだです」と自らに言い聞かせるように言った。

 冷静な自己分析、周囲の意見に耳を貸す謙虚さと、裏腹の攻撃性の高いプレースタイル…松田の名前を覚えておいて損はない。【村上幸将】

 ◆松田天馬(まつだ・てんま)1995年(平7)6月11日、熊本県益城町生まれ。熊本ユナイテッドSCから東福岡高をへて鹿屋体育大に進学。13年にU−18(18歳以下)日本代表候補、14年に日本高校選抜と九州大学選抜、15、16年に全日本大学選抜、17年にユニバーシアード日本代表入り。