先日NBAのトッププレーヤーであるステフィン・カリーが、PGAツアーの下部ツアーのエリー・メイ・クラシックに出場するという報道があった。

 カリーはNBAで2度のMVPを獲得、今季も所属のウォリアーズを優勝に導くなど現役バリバリのスター選手だ。ゴルフのキャリアも素晴らしく、ハンディキャップは2・2。近年ではトーナメントコースでもあるペブルビーチゴルフリンクスを70でラウンドするなど、その実力はプロ顔負けである。

●NBA選手がPGA下部ツアーに

 アメリカでは学生時代、シーズンごとに複数のスポーツを並行して行うことは珍しくはないが、カリーも高校生の時にバスケットボールの傍ら、熱心にゴルフに取り組んでいたそうだ。

 「今はよく鏡の前で自分のスイングを研究し、テレビで観るプロのスイングと比べたりするんだ」

 過去にテレビのインタビューで、ゴルフに対してこのように語っており、アスリートとしてゴルフの技術向上にも熱心に取り組んでいるようだ。

 ゴルフの手ほどきは「父から」だそうだが、現役の今も高いレベルでラウンドをすることができるのは、スイングを体系立てて理論的にとらえているからではないかと思う。

 カリーのスイングのお手本はアダム・スコットだそうで、体の動きだけでなくクラブの動きもよく観察をし、それに近づくような取り組みをしているという。

●感性はジュニア時代に磨かれる

 私自身、プロを目指すジュニアを教えることもあれば、社会人になってからゴルフを始めたアマチュアを教えることもある。

 スイングが出来上がっていないジュニアを教える場合、最初にスイングの理屈を体系立てて教え込むことはない。理由は単純で、彼らが理解ができる年齢ではないからだ。それよりもゴルフの楽しさを教え、自由にボールを打たせる。そうすると自然と「ちょっと重いクラブでボールを飛ばすためには、どうすればよいか」を動きの中で探し出し、ヘッドを走らせる下半身リードの動きや、ボールを高く上げるために必要な打ち込む動きを覚えていく。

 現在PGAツアーで戦う多くのプロが、このようにして体でスイングを覚え、その感性を生かして技術を磨き上げてきている。しかし、やはりそれだけでは限界がある。自分の動きを数値化しないまでも、状態を分析できる程度に把握しておかないと、調子が悪くなった時に、どう修正をしていいのか分からなくなってしまうのだ。

 彼らは感覚でスイングを覚え、足りない部分は理論を用いて日々微調整を行っているのだ。

●19歳でゴルフを始め、メジャー制覇

 稀ではあるがプロゴルファーの中には、感覚ではなく理論からスイングを構築した選手もいる。現在もPGAツアーで戦うベテラン、Y・E・ヤンもそのうちの一人だ。ヤンは19歳からゴルフを始め、その後、韓国、日本、欧州のツアーを経て、09年にはアジア人として初の海外メジャー優勝者になる。

 「初めて彼のスイングを見たとき、すでに完成されたシンプルなスイングだったのを覚えている」

 ヤンがPGAツアーに挑戦するため渡米した直後から、コーチングをしていたブライアン・モッグの意見だ。

 「ヤンはゴルフを始めた年齢が遅かったせいか、自分のスイングや考え方を理論立てて考えることにたけていた。私がコーチングをする以前は独学でスイングを学んでいたようだが、その取り組み方も丁寧にプランニングされたものだった」

 ジュニアからゴルフに取り組んできた選手と練習時間の差がつく分、感覚を磨くのではなく理論を用いることで、トッププレーへの道を駆け上がることができたのだ。

●頭で理解することが大事

 16歳からゴルフを始めたツアープロの妻を持つアンドリュー・パークは、ヤンのように「幼いころから感覚を磨く時間がなかったとしても、悲観すべきことはない」という。

 「ゴルフは始めた年齢ではなく、どのように取り組むかのほうが上達に大きな影響を与えます。ただ数をこなすような練習は、上達への近道とはなりえない。どうすれば毎回インパクトでフェースがスクエアになるのか考えながら、スイングを作るとよいでしょう。素振りであればコースへ行かなくてもできるし、ボールがない分、身体の動きに集中できるので、効果的な練習です」

 さて皆さんは、上達しないことを時間のせいにしたり、環境のせいにしたりしていないだろうか。ステフィン・カリーのように超多忙なプロスポーツ選手でさえ、時間を見つけては鏡の前でスイングの研究を怠らないのだ。

 私たちも適切な方法で継続した取り組みができれば、夢だと思っていたレベルに到達することができるだろう。

 ◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。シングルプレーヤー養成に特化したゴルフスイングコンサルタント。メジャータイトル21勝に貢献した世界NO・1コーチ、デビッド・レッドベター氏を日本へ2度招請し、レッスンメソッドを直接学ぶ。ゴルフ先進国アメリカにて米PGAツアー選手を指導する50人以上のゴルフインストラクターから心技体における最新理論を学び研究活動を行っている。早大スポーツ学術院で最新科学機器を用いた共同研究も。監修した書籍「ゴルフのきほん」(西東社)は3万部のロングセラー。オフィシャルブログ http://hiroichiro.com/blog/

(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ゴルフスイングコンサルタント吉田洋一郎の日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)