的確な商品提案と気さくな会話で何人もの「固定客」を抱える販売員がいる。デサントが展開するアウトドアブランド「マーモット」のグランフロント大阪にあるマーモット大阪(大阪市)で店長を務める三浦智恵さん(38)だ。同社で約15年間販売してきたベテランは、時にはコンプレックスや失敗も自己開示し、顧客の心を開かせる。

「山用ですか。それとも街用ですか」。マーモットはアウトドア用の衣料品や用具を扱うブランドだが、普段着としても人気が高い。三浦さんはまずニーズの聞き取りに徹する。防寒や防水など機能に特徴のあるアウトドア衣料の場合、使用時に不具合があると二度と使ってもらえないためより慎重な商品提案が求められるという。

把握したニーズと性別を加味して顧客ごとに接客を変えている。例えば、アウトドア用の衣料を探す女性なら色々な商品を見せつつ、勧めたい1品をうまくアピールする。購入を決めた顧客に「これも足してかわいく着てみませんか」と別の商品も勧めると、ついで買いをしてくれることも多いという。「女性はかわいいコーデをしたいという人が多い。『本当は買うつもりなかったのに』といわれるとうれしい」とほほ笑む。

アウトドアファッションが好きだったという三浦さんは、米発のカジュアルブランド「ノーティカ」に憧れて2005年にデサントの販売員になった。別のブランドに移ってから店舗の退店に伴い、一時退社したが、12年に復帰し、マーモットの店長としてキャリアを積んできた。

接客で心がけているのは自己開示をして、自分を好きになってもらうことだという。時には失敗やコンプレックスもさらけ出す。「女性はサイズ感や体のラインでコンプレックスを抱えている人が多いが、初対面では普通言えない」と語る。自らのコンプレックスをさらけ出せば、顧客は心を開き、プライベートの話もしてくれるようになるという。

「3回連続で接客できれば信頼関係が築けることが多い」(三浦さん)。親しみやすい接客に心引かれ、何人もの顧客が三浦さんを訪ねに来店するという。新型コロナウイルス感染拡大で外出自粛中の顧客が「私におすすめの商品ある?」と店に電話を掛けてくることもある。「ここまで信頼関係を築くのが理想」と自信を見せる。

「マーモットの直営店はもともと1店しかなく、増やすことが夢だった」と話すように、三浦さんは所属店舗の売り上げを伸ばし、実績を作ったことで、デサントとしてマーモットの直営店を6店舗体制に拡大するきっかけを作った。ただ、今はコロナ禍で苦戦気味だという。

それでも密を避けて楽しめるアウトドアライフの潜在力は高く、機能とファッション性を兼ね備えた同ブランドにかかる期待は大きい。三浦さんは「軌道に乗るまではマーモットの店長として頑張りたい」と力を込めた。

(佐藤諒)

[日経MJ2021年3月22日付]