経団連と大学側が新卒学生の採用に関し、職務を特定せずに一括で採用する現行の「メンバーシップ型採用」から、専門スキル重視の「ジョブ型採用」を中心とする多様な形態に移行していくことで合意した。海外では一般的なジョブ型採用の導入は、就職市場にどんな変化をもたらすのか。また、若者の就職意識やキャリア観にどんな影響を与えるのか。人材サービス大手、エン・ジャパンの沼山祥史・執行役員エンエージェント事業部長に聞いた。

◇ ◇ ◇

――合意のニュースを聞いた第一印象は。

「正直、今更感が強い。楽天やサイバーエージェントなどウェブ系の会社の多くは、すでにジョブ型採用を取り入れている。そういった会社は採用市場での人気も高い」

「ただ、大企業が加盟する経団連がジョブ型採用の推進を宣言したのは、それなりに意義がある。企業の国際競争力を考えた時、日本の弱点は、企業も働く個人も専門性が見劣りすることだ。ジョブ型採用が広がれば、企業も個人もより専門性が高まるのは間違いない。個人のキャリア形成にとっても悪いことではない」

――ジョブ型採用が注目される背景は何か。

「現状では、AI(人工知能)の開発やビッグデータの解析を担うエンジニアやマーケティングの専門家など一部の専門職で、人手不足感が顕著だ。エンジニアなどを必要とする業種は昔は限られていたが、今や小売りやサービス業などあらゆる業種で必要になっているためだ。例えば、ファーストリテイリングとアマゾン・ドット・コム、トヨタ自動車とグーグルなど、異業種間で同じ人材を奪い合う現象が起きている」

「こうした人材獲得競争で、日本の大企業は外資系やベンチャー企業に非常に分が悪い。メンバーシップ型の採用をしている企業の給与制度は、年功序列を前提とした職能給であるため、ほしい専門人材に柔軟な条件提示ができない。結果、条件面で有利な外資やベンチャーに負けてしまう。こうした現状を何とかしないと企業として生き残れないという危機感がある」

■しっかりとした職務記述書が必要に

――ジョブ型採用が広がれば、思惑通り、大企業は優秀な人材を外資系やベンチャーから奪い返せるのか。

「ある程度はうまくいくと思う。ただ、今回の合意は、従来のルールを見直して横並びの採用をやめますと宣言したにすぎない。そもそも専門人材は、大手志向がそれほど強くない。ルールの変更を受けて、各社が専門人材を社内できちんと生かすための体制を整えないと、結局は外資やベンチャーには勝てないだろう」

「例えば、専門人材を受け入れるにはしっかりとしたジョブ・ディスクリプション(職務記述書)をつくらないといけない。メンバーシップ型は、例えば、総務の人間が経理や人事をやったり、ときには営業アシスタントもしたりするなど、職務範囲が非常に曖昧だ。専門職として働いてもらう人材に対し、どんな仕事をしてほしいかきっちり言語化しないと、うまく機能しないだろう」

「面接を受ける学生に対しても、従来のメンバーシップ型雇用を前提としたキャリアビジョンではなく、専門職としてのキャリアビジョンを魅力ある形で提示できないと、学生は関心を持ってくれない」