野菜メニュー主体のレストラン「WE ARE THE FARM(ウィー アー ザ ファーム)」は、名前の通り、自分たちで育てた野菜を調理して提供している。既に首都圏で7店舗を構え、4月には新業態のファストフード店もオープンする。農家が副業的に始めた、いわゆる「農家レストラン」と異なるのは、大量生産に向く「F1種」ではなく、大きさや形が不ぞろいで、地域の伝統的な品種である「固定種」にこだわっているところだ。

固定種とは、農家が毎年、種を採って、栽培を受け継いできた品種のことだ。種苗会社から種子を買って育てる、1代限りの性質を持つF1種とは正反対の位置づけだ。次の世代に性質が受け継がれないF1種とは異なり、それぞれの性質が固定されているところから、「固定種」と呼ばれる。現在の日本ではF1種が流通量の大半を占め、固定種は希少な存在となっている。

この固定種をあえて軸に据えて、事業を立ち上げたのは、同じ立命館高等学校時代からの同級生である、運営会社「ALL FARM」の古森(ふるもり)啓介社長と寺尾卓也副社長のコンビだ。「将来は食に関連する仕事を一緒にしよう」と、高校時代から語り合っていた2人は、ぼんやりと農業を柱に据えた起業を思い描きながら立命館大学へ進学。「当時から食べることが好きで、食のビジネスを手がけたいという気持ちを抱いていた」(古森氏)

農業と販売を一気通貫で手がける「食ビジネス」を思い描くようになったのは、「大学に入った頃」(古森氏)。米国で食べたケールの味に驚いたのがきっかけだ。キャベツと同じアブラナ科の野菜だが、いわゆる「青汁」の原料として有名なせいか、苦く硬いというイメージがある。しかし、古森氏が食べたケールは甘く柔らかかった。「これを日本で食べてもらいたい」という気持ちが募り、起業のイメージが輪郭を結び始めた。

2人が面白いのは、別に分担をはっきり決めたわけではないのに、それぞれが将来の起業に役立つように、キャリアを積んでいったところだ。大学を卒業した古森氏はもともと料理好きだったこともあって、飲食サービスの道へ。主に東京都内の和食店で腕を磨いた。一方、幼い頃から畑仕事の経験があった寺尾氏は関西で農業に従事した。「おのおのが向いている仕事を選んだだけで、たまたま好みが分かれた」と、古森氏は振り返る。

東京と大阪でそれぞれにスキルを深めた2人は2014年、東京・代々木上原に「WE ARE THE FARM」の第1号店を開いた。だが、事業の始まりはもう1年さかのぼる。「Farm to table(=農場からテーブルへ)」をコンセプトに掲げる2人は、レストランを開く前に、野菜の生産拠点を探した。13年に千葉県佐倉市で農場を開いて、野菜を自前で調達できる見通しを立ててから、店を構えた。