社員がいきいきと働き、高いパフォーマンスを発揮する職場をつくるには何が必要か。産業医として多くの企業で社員の健康管理をアドバイスしてきた茗荷谷駅前医院院長で、みんなの健康管理室代表の植田尚樹医師に、具体的な事例に沿って「処方箋」を紹介してもらいます。

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、企業もさまざまな対応を迫られています。在宅勤務などのテレワーク、通勤ラッシュを和らげる時差出勤、事業所の一時休業――。できることはやったはずだと思っても、ついつい日々の仕事を優先してしまい、見落としていることはありませんか。産業医として見聞きしたケースを紹介します。

まずは中小企業の事例です。100人以上の社員をかかえる人材サービス会社で、本社は繁華街にある雑居ビルにありました。訪れてみるとワンルームマンションほどの広さで、社長をはじめ数人が仕事をしていました。これだけ新型コロナが騒がれているのに、マスクを着用している人はおらず、「近隣から『うるさい』と苦情がくる」との理由から、窓もドアも閉め切られていました。

まさに「密閉・密集・密接」の「3密」状態です。話を聞くと、現場に派遣している社員にはきちんと使い捨てマスクを配布しているといい、結果としてバックオフィスが後回しになった格好です。3密というと、ナイトクラブやカラオケ、ライブハウスなどが注目されますが、職場や家庭など普段生活している環境でも、条件は比較的簡単にそろいます。

「周りで誰も感染していないのだから……」という身勝手な言い訳と、感染拡大が続く状況への「慣れ」、さらにいえば新型コロナについての「無知」が、油断を生んでいるのではないでしょうか。

この会社には以下のような対応を取るように強く指導しました。(1)職場でのマスク着用 (2)手洗い・うがいの励行 (3)1時間に1回5分間の換気の徹底 (4)体温や体調を管理するチェック表の導入――などです。各人が自ら検温や健康状態のチェックを毎日行うことで、意識の向上も期待できます。

社員が新型コロナに感染して職場がクラスター(感染者集団)となれば、ただちに事業はストップします。社員が少なければ少ないほど、その影響は大きくなり、経営が立ち行かなくなる恐れも高まります。中小企業の経営者のみなさんは、社員の感染防止が会社の命運を握っていることを肝に銘ずるべきでしょう。

大きな会社でも、対応が行き届いていない場合があります。