「デザインの世界には、ビジネスマンが日々の仕事の中で新たな価値を創るためのノウハウがたくさん存在しています」。日本でのデザイン思考の第一人者といわれる佐宗邦威氏はこう言います。先ごろ大幅に加筆修正して文庫化された同氏の著書『世界のトップデザインスクールが教えるデザイン思考の授業』(日経ビジネス人文庫)から、その思考法を紹介します。

■デザイナーから学ぶ知的生産性を高めるノウハウ

デザイン思考の1丁目1番地、それは「デザイナーの思考法」そのものです。「デザイン思考のプロセスをなぞってもなかなか面白いアイデアが出ない」という方もいますが、論理的思考のままデザイン思考のプロセスだけなぞって失敗してしまうことが多いように思います。

思考法というと、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングなど左脳による論理思考が有名ですが、ID(イリノイ工科大学デザインスクール)に通うデザイナーが目指す思考スタイルは、左脳と右脳の両方を活用したハイブリッドな思考です。それは、左脳の論理の力と、右脳のイメージの力を両方バランスよく使いながら、自分ならではのユニークな切り口を出すという、創造=「知的生産」を日々実践することになります。

このハイブリッド思考を、「インプットの質」「発想のジャンプ」「アウトプットの質」という3つの要素に分解してみました。限られた時間を有効に使いながらそれぞれの質を高めていくことで、皆さんの知的生産性を大きく上げることができます。

また、新たな切り口をだすための思考を日々実践するためのヒントとして、デザイナーの同級生たちとともに作業を進める中で学んだ、デザイナーならではのコツがあります。デザイナーが日々口ぐせのように考えている質問です。各要素の解説の最後に紹介しますのでぜひ日常で試してみて下さい。

■インプット:ビジュアルを集め、ビジュアルで考える

デザイナーは、プロジェクトを始める際、アイデアを考えるためのリサーチを行います。

ビジネスの世界でリサーチというと、ウェブサーフィンや記事検索、書籍等で、市場規模が大きくなっているのかどうか、競合の戦略はどうか、ユーザーのニーズの変化などデータ分析をするのが定石です。

デザイナーも同じようにリサーチをするのですが、それ以上に大事にされている習慣は、ビジュアルのイメージや動画を集めることや現場を訪問するなど、五感を刺激するインプットをすることです。