「デザインの世界には、ビジネスマンが日々の仕事の中で新たな価値を創るためのノウハウがたくさん存在しています」。日本でのデザイン思考の第一人者といわれる佐宗邦威氏はこう言います。先ごろ大幅に加筆修正して文庫化された同氏の著書『世界のトップデザインスクールが教えるデザイン思考の授業』(日経ビジネス人文庫)から、デザイン思考の入り口となる思考法を紹介します。インプットの量について指摘した前回に続いて、今回は質についてみていきます。

●質・自分が見ていた世界と違う幅の世界に触れる

重要なことは、普段自分が無意識に接している世界とまったく違う振れ幅の世界に触れることで、発想を広げることです。私たちは、普段自分の関心に近い情報を無意識に摂取しています。これを心理学では認知バイアスと呼びますが、発想を飛ばすには、自分が普段フィルターをかけていて入ってこない世界に触れるのが一番の近道です。

たとえば、次のような軸で幅を作ることができます。

・人間横断:自分とはまったく違う環境の人の生活や人生に触れる(共感)
・分野横断:共通項を持ちながらまったく違った分野での例に触れる
・地理横断:世界のまったく違った場所で起こっていることに触れる
・時間横断:歴史的な観点から時代を経て起こっている違いと共通点を知る
・価値横断:上質なモノや体験に触れる

人間横断の例としてよくあるのが、商品開発に向けてユーザーリサーチを行うときの観察対象者に、エクストリームユーザーと呼ばれる極端な好みを持ったユーザーをあえて選ぶことです。

通常、ビジネスの世界でマーケットリサーチを行う場合には、その市場を代表する平均的なユーザーをリサーチするのですが、たとえば音楽の超ヘビーユーザーであるDJやCDをまったく買わない若者を調査することで、思考の幅を広げることができます。