日本を代表するデジタルアート制作会社、チームラボ(東京・千代田)。プロジェクターなどで映し出された映像が、鑑賞する人たちの動きに反応してさまざまに変化する、最先端のデジタル技術を駆使した作品で世界から注目を集め、東京・台場の常設展示場は開館1年で世界160以上の国・地域から230万人を集めた。代表の猪子寿之さんは「ヒーローが皆を引っ張るスタイルから、一人ひとりが主体性を持って自分の方向性を決めるようになる」と語り、組織の新しいあり方を探る。

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――自分自身をどんなリーダーだと思いますか。

「僕はいわゆる『リーダー』ではないと思います。そもそもリーダーシップみたいな概念が僕は薄いんですよ。なんて言えばいいのかな。20世紀から続くリーダー像、いわゆるスターやヒーローがあるじゃないですか。周りから見ていると格好いいし、ついていこうと思わせる力がありますよね。でもヒーローを仰ぎ見ている人たちには自分の意思や主体性があるのかな、もしかして見失っているんじゃないかな、と感じるんです」

「チームラボはアートをつくっている組織です。何をしているかというと、こういうものを創りたい、という意思や主体性を持った専門家が集まって、『知』を持ち寄ってつなぎ合わせていくことでアートを生み出しています」

「一方で、組織を引っ張るリーダーシップと聞いて僕がイメージするのは、工場で皆にやる気を出させて商品を効率的に生産するとか、軍隊などの組織が他の組織に勝てるよう個人に命令通りに動いてもらう、といったものです。それは、個人に主体性を発揮してもらうとか、自分が今やっていることの意味を考えよう、という発想とは正反対ですよね。チームラボの考え方とは違うんです」

東京・台場のミュージアム「チームラボボーダレス」は開館1年で世界160以上の国・地域から230万人を集めた (c)チームラボ

――新しい組織のあり方を模索しているということですか。

「そうですね。これからの組織はもっと、自分の意思を持った個人、主体性を持っている個人が他の人と一緒に何かを生み出すようなものになっていくと考えています。そういう意味で、立派なリーダーに憧れるんじゃなくて、個人が自分自身を引っ張っていく姿勢が必要になるのだと思います」

■それぞれ必死に活動した結果が大きな動きに

「僕は大学でサイエンスを専攻しました。サイエンスの発想って、自然や歴史の大きな流れは一人の立派なヒーローによって変わるんじゃなくて、みんながそれぞれ必死に活動した結果が大きな動きにつながる、というものだと思うんです」

「これまでの組織の多くは既存の商品やサービスをいかに速くつくり上げるか、効率性に焦点が当たっていましたよね。これって人が創造性を発揮するとか、イノベーションを起こすこととは関係が無いのかもしれない。そうした組織は、その時代はそれで良かったんでしょうけど、これからは違った組織のあり方とか関係性が求められると思います」