生鮮宅配のオイシックス・ラ・大地は外食大手と資本業務提携を結んだり、食のスタートアップ企業に出資したりするなど、事業領域を急速に広げている。一方、新型コロナウイルス禍に伴う巣ごもり需要で会員が急増した結果、物流施設の稼働が限界に達し、新規入会を一時停止する問題も起きた。高島宏平社長は「リーダーには変化対応力が最も必要」と語る。その上で「誰かになろうとするのではなく、自分らしさに自信を持つべきだ」と説く。

(上)倒産の危機こそ笑顔で 流行歌やお菓子で社員を鼓舞

■理想は「カメレオンリーダー」

――リーダーに最も求められることは何ですか。

「変化対応力です。初めは売上高が数千万円の会社のリーダーでしたが、企業規模が大きくなれば役割も変わります。平時と、新型コロナウイルス禍や大地震のような有事でも違います」

「それぞれの段階や状況に応じて何が求められているかを理解し、演じることができる人が向いていると思います。一言で表すとカメレオンのようなリーダーです」

「これから当社のリーダーに求められるのは成功体験を捨て、過去を壊すことです。オイシックスは誕生から20年近くたちました。経営統合した『大地を守る会』や『らでぃっしゅぼーや』は30年以上です。短期的に考えると、既にお客さんがいて、変化しなくても売り上げは伸びます。努力しなくてもいいため、それが一番心地いい。ただ、それでは次の一手が打てなくなってしまいます」

――個人消費や市場が大きく変わる中で、どう対応しますか。

「変化というと他社との競争環境を考える人も多いですが、私はあまり考えていません。確かにインターネットで生鮮食品を販売する会社は増えており、大手小売業も強化しています。ただ、それ以上に消費者の変化に敏感であることを心がけています。食品ロスといった環境問題や、新型コロナで高まる健康への意識は日々、形を変えており、それに合う商品を投入しなければなりません」

「ネットの食品販売はそもそも小さい市場です。今はこの市場を奪い合うのではなく、各社のアイデアで市場を広げる段階です。例えば『利便性に特化する』『とにかく安さを追求する』『高くても味にとことんこだわる』といった様々は手段が考えられます。それぞれの企業の強みを生かす必要があります」

――こうした発想は対応の早さにつながっています。

「この強さは組織文化でもあります。野菜を扱っているため大雪や台風、果てには害虫が大量に出たなど、毎日何かしら問題は起きます。顧客に迷惑をかけないことはもちろん、生産者の商品を無駄にしないために全社員が頭をひねっています。日々の小さな有事で鍛えられているため、東日本大震災など大きな有事でも素早く対応できました。当時は震災発生から1週間で商品に独自の放射線検査を実施しました。これは小売業の中でも1、2を争う早さだったと思います」