「デザインの世界には、ビジネスマンが日々の仕事の中で新たな価値を創るためのノウハウがたくさん存在しています」。日本でのデザイン思考の第一人者といわれる佐宗邦威氏はこう言います。先ごろ大幅に加筆修正して文庫化された同氏の著書『世界のトップデザインスクールが教えるデザイン思考の授業』(日経ビジネス人文庫)から、デザイン思考の入り口となる思考法を紹介します。

■ストーリーテリング

デザイナーのプレゼンテーションの特徴は、できるだけ具体的なストーリーを表現しようとすることです。

たとえば、リサーチの結果をプレゼンテーションする際にも、8人のユーザーに共通していることではなく、1人の特徴的なユーザーの具体的なストーリーを語ります。そうすることで、人の心を動かすことを主眼に置いたプレゼンテーションを作ることができます。

ここでよく使われるのが、ハリウッドのヒット映画の脚本づくりでも使われている、「英雄の旅」と呼ばれるフレームワークです。

ごく簡単に説明すると「物語の最小構成要素としての4つの要素」を、ユーザーを主人公にした「自分たちが提案したいサービスの最小構成要素としての4つの要素」に置き換えてしまうのです。

物語の最小構成要素としての4つの要素:

1 主人公が、
2 宝物を得るために、
3 試練に打ち勝つことで、
4 幸せになる

自分たちが提案したいサービスの最小構成要素としての4つの要素:

1 主人公であるサービスのユーザーが、
2 サービスを使うことの便益を得るために、
3 日々感じている課題に取り組むことで、
4 日々がちょっと幸せになる

これができるようになるための最初のステップは、ログラインと呼ばれる物語の要旨を2〜3行で表現することです。これは、映画のパンフレットや、文庫本の裏などにある短い要約説明に近いものです。