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欧米の先進IT企業を中心に経済学の知見をビジネスに生かそうという動きが広まっている。DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が高まる中、その動きはIT業界にとどまるものではない。経済学の社会実装というミッションを掲げて事業展開するエコノミクスデザイン(東京・新宿)の代表取締役、今井誠氏がその背景や具体的な実装例、活用に向けた経済学の学び方を解説する。

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近年、規模の大小にかかわらず、企業の重要課題となっているDX。しかし、蓋を開けてみると、本来のDXの強みを生かして推進できていない企業は少なくありません。私たちのもとにも、DX推進がなかなかはかどらず、「何から始めたらよいか」「ITツールを導入したが、もっと効率を高めたい」など多数の相談が寄せられています。

ここで私が感じている点は、そもそも各企業に必要な本質的データが収集できておらず、結果課題解決に対応していないことです。そこで今回は、データ分析を中心に、経済学のビジネス実装について解説していきたいと思います。

■「DX推進チームメンバー」の選出基準づくり

DXとは、人工知能(AI)やビッグデータなど様々なデジタル技術を使い、業務改善を行ったり、新たなビジネスモデルを創出したりすることを目指すものです。こうした前提知識からか、多くの企業では、DX推進チームは社内のデジタル人材を中心に構成されています。しかしこれが、DXが進まない大きな原因の1つになっています。

DXはその性質上、各業務の深い専門知と横断的かつデータ分析などの専門知双方の活用が求められます。ですから、それぞれ企業のDXの目的に合わせたDX推進のチーム編成をします。しかし、そういうチームをつくるとなれば、以前システム部にいて今は別の部署で活躍している人材や、大学時代に工学系の分野で研究をしていた人材などをDX推進部に抜てき異動させるなどになってしまいます。デジタル技術に関して、ある程度の水準が求められるのはもちろんですが、それ以上に、各企業がDXで目指すことそのものに精通していることが不可欠です。

しかし、担当部門からデジタル人材が集まっても、DXに必要な知見を網羅的に知っているわけではありません。また、デジタル人材が集まってDXできる点をヒアリングする、といった方式では、既存業務のデジタル化しかできません。この点では、日本企業の従来の働き方である「メンバーシップ型」では専門知識が到底追いつかず、「ジョブ型」が優位性を発揮するかもしれません。メンバーシップ型の組織体系で、その部署への異動が決まってから、勉強という形式になります。しかし、それではそもそも自社の課題に対応できる知見をピンポイントに学ぶことはかなり難しいと思います。

本来、ここで能力を発揮するのは、データ分析のスペシャリストである経済学者の知見なのです。特に、様々な需要予測モデルや因果推論などの知見を活用することをお勧めします。業務の効率化を目指す場合、これから何をするかを予測し、それに合わせた対応をしていく。これにより、収益や業務効率は改善していきます。各経済活動の要因を分析する手法は、膨大に研究されています。つまり、巨人の肩に乗って、DXを推進していく。DXの目的に合わせたチーム編成こそが、DX成功の鍵を握っているのです。