クレパスは子供の自由な発想を引き出す

1925年に誕生した世界初のオリジナル画材「クレパス」。開発したサクラクレパス(大阪市)は試行錯誤を重ねながら、国民的ロングセラーへと育て上げた。「商品力」が数十年を過ぎても衰えないのはなぜか。少子化の流れに反して、売上高が8年連続で過去最高を更新し続けるのはなぜか。同社が歩んできた歴史をたどると、「100年続く企業」の条件が見えてくる。(前回記事「サクラクレパス創業100年 発売直後に全品回収のピンチ」)

クレパスといえば、山吹色の背景に、犬やバラ、フラミンゴなどの絵があしらわれたパッケージを思い出す人も多いだろう。このデザインは69年から50年以上も基本は変わっていない。当時と2021年現在で異なるのは2点。パッケージ下部に、どんな色が入っているのかを一覧できる見本(カラーチャート)が追加された点と、箱のふたが外れて中身がこぼれてしまうのを防ぐゴムバンドが付いた点だけだ。

現在の「サクラクレパス」パッケージ

世界初の「全芯タイプの色鉛筆」として話題を集めたクーピーペンシルに至っては、1973年の発売時から全く変わっていないという。数十年も続くロングセラーとなれば、消費者に飽きられないよう、節目ごとでパッケージデザインを変えて目新しさを保つ例が珍しくない。そうした方針を取らないことに、理由はあるのか。広報の大塚さゆり氏は、こう語る。

「クレパスもクーピーペンシルも、もともとのデザインの洗練度が高く、時代を経ても古さを感じさせない仕上がりになっていたことが大きかったのだろうと思います。一方で、おしゃれなだけではなく、消費者に『懐かしい』『親しみが湧く』といった実感を持ってもらえていることがうれしいですね。長く愛され続けるためには必須の条件です」(大塚氏)

「これは私見なのですが、『楽しい思い出』と結び付いていることは『強み』なのかもしれません。年齢が上がるにつれ、図画にも評価がついて回るようにはなりますが、幼いころの『お絵描き』といえば、身近な人に喜んでもらえたり、たくさんの色に胸が躍ったりした思い出のほうが多いでしょう。その記憶が大人になっても残っているから、『変わらない』パッケージに愛着を持ってもらえているのではないでしょうか」(大塚氏)

実際、サクラクレパスと他社がコラボレーションして開発した大人向けの雑貨が売り上げ好調だという。スマートフォンケース、腕時計、クッキー、カラーマスカラなど、多彩な商品群が登場。なじみのパッケージデザインが外装などへ効果的に活用されている。大手EC(電子商取引)サイトでクッキーの購入者の口コミを見ると、「本物」そっくりな入れ物に心を引かれ、手元に置きたいと感じた人が多いことを見て取れる。

「クレパス700色セット」

同社は創業90周年を記念し、翌年の2012年に「クレパス700色セット」、100周年の21年に「クーピーペンシル100色セット」を販売している。これらの限定商品は、いずれも大人の文具ファンから支持を受けている。