企業がダイバーシティに取り組むべき理由として、見過ごせないのが、世界的に高まる「ESG投資」の流れです。環境・社会・ガバナンスに配慮した企業を選別・投資するESG投資と、ダイバーシティ推進との間に、どんな関係があるのでしょうか。世界銀行グループ・多数国間投資保証機関(MIGA)の長官を務め、現在は米国コロンビア大学でESG投資について教える本田桂子さんに、解説してもらいました。

■日本企業はダイバーシティで後れを取っている

日経xwoman編集部(以下、――) 大口の資金を持つ機関投資家の間で、「ESG投資」が熱を帯びています。そもそもなぜ今、ESG投資が注目されているのでしょうか。

コロンビア大学客員教授 本田桂子さん(以下、本田) ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)に配慮した企業を選別して投資すること。先が見通せない世界で中長期的に成長するためには、業績などの財務指標だけでなく、環境(E)や社会(S)、企業統治(G)への取り組みといった「非財務情報」が重要だと考えられるようになりました。持続的に成長できそうな企業を見極めるため、投資家は企業のESGへの取り組みを厳しく見ています。投資マネーを呼び込むために、企業はESGに取り組まねばならなくなっています。

――環境、社会……と言っても幅広いですが、具体的にどんな項目に取り組めばいいでしょう。

本田 例えば「E(環境)」では、気候変動対応や、水質汚染対策などが代表的ですね。「S(社会)」には、従業員のダイバーシティのほか、人権、児童労働、地域の安全、製品の品質保持…など、多岐にわたる項目が含まれることがあります。

企業のESGへの取り組みに対する評価項目の例(評価機関によって項目は異なる)

■E(Environment:環境)
・気候変動対応
・汚染予防―空気、水(海、川、湖など)
・バイオダイバーシティ
・下水処理
・廃棄物処理
・希少動植物への対応…など

■S(Social:社会)
・地域の安全
・公衆衛生
・個人情報保護
・データセキュリティー
・製品の品質保持と安全性確保
・従業員の安全と衛生
・従業員のダイバーシティとインクルージョン(性別、人種、国籍など)
・児童労働
・先住民族
・文化遺産…など

■G(Governance:企業統治)
・法令順守
・独占禁止
・汚職防止
・租税回避
・使用する会計基準の適切性
・リスクマネジメント…など

注)IFC/MIGA E&S Performance Standardをもとに本田さんが作成

――従業員のダイバーシティは「S」に含まれるのですね。しかし取り組むべき課題が多すぎて、ダイバーシティへの取り組みが後回しにならないでしょうか。