2階ビジネス書売り場メインの平台で、角を使って4列に積み、展示する(三省堂書店有楽町店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は2〜3カ月に1度訪れる準定点観測書店の三省堂書店有楽町店だ。訪れたのは平日の午後だったが、その時間帯にしてはまずまずの来店状況だった。新型コロナウイルスの第7波も下降局面に入って1月あまりたち、客足も戻りつつあるようだ。そんな中、書店員が注目するのは、先ごろ亡くなったカリスマ経営者、稲盛和夫氏の遺著だった。

■「まえがき」の日付は2022年8月

その本は稲盛和夫『経営12カ条』(日本経済新聞出版)。副題には「経営者として貫くべきこと」とある。京セラ、第二電電(現KDDI)を創業し、晩年には日本航空の再建を主導したカリスマ経営者の稲盛氏。死去が報じられたのが8月30日で、本書はほぼ1週間後に店頭に並んだ。くしくも遺著となった一冊だ。

〈世の複雑に見える現象も、それを動かしている原理原則を解き明かすことができれば、実際には単純明快です。こうした考えの下、「どうすれば会社経営がうまくいくのか」という経営の原理原則を、私自身の経験をもとにわかりやすくまとめたのが、「経営12カ条」です〉

こう書き起こす「まえがき」の末尾に添えられた日付は「2022年8月」。亡くなったのは8月24日と伝えられているから、ほんとうに最後の最後までこれからの社会をになう後進の経営者たちへ自らの経験を伝えようとしていたことになる。経営12カ条の力を信じて「理解と実践に努めていただきたい」と著者は読者に呼びかける。

経営12カ条自体はこれまでも講演などで何度となく言及され、CDやビデオにもなり、著作集の中で語られてもいる。だが、そこだけにフォーカスした本は本書が初めてといい、版元では『稲盛和夫の実学』『アメーバ経営』と並べて稲盛経営3部作をうたう。