サントリースピリッツの名誉チーフブレンダー、輿水精一氏の「仕事人秘録」。第6回ではブレンダーとしての自信を得ていった時期を語ります。

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ブレンダーになって7年目のころ。それまでにない味わいのウイスキー開発に没頭していた。

1980年代半ば以降は焼酎におされ、ウイスキーの消費量が減り続けていた。どうにかしたいという強い思いが社内にも私にもあった。そこで、焼酎のように飲みやすい、すしをはじめ和食に合うウイスキーとのコンセプトを掲げて、新製品開発を進めていくことになった。食事に合わせるという発想はワインでは当たり前なのに、ウイスキーでは希薄だった。既存の価値観に捕らわれず、新しい試みに挑んだ。

スギ材の樽(たる)で寝かせて熟成させた原酒を初めてブレンドした。スギは経木の材料にも使われており、まさに和をイメージさせる香りがする。ごく少量でもウイスキー全体の香りを覆い尽くすほど個性があり、これまでにない製品をつくるためのカギと位置づけた。

澱(おり)や雑味などを取り除くために原酒をろ過する工程で、竹の炭を利用した。高知県の仁淀川上流域で手作りされる良質な竹炭を探し出し、ほのかな甘みを含む滑らかな口当たりを引き出すのに役立てようとした。