児童虐待の件数が増えていると聞いたわ。大きなニュースになるような事件も続いているし、政府も対策に乗り出しているようだけど、どうして減らないのかしら。

児童虐待の実態や政府が進める対策などについて、三浦綾さんと関満子さんに辻本浩子編集委員が解説した。

――児童虐待の件数が増えています。

全国の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は、2018年度で15万9838件と過去最多になりました。10年前の08年度と比べ約4倍です。

児童虐待には(1)身体的虐待(2)心理的虐待(3)性的虐待(4)ネグレクト(育児放棄)――の4種類がありますが、近年、特に増えているのは心理的虐待です。子どもが家でDV(ドメスティック・バイオレンス)を目の当たりにしたような場合も、心理的虐待に該当します。こうしたケースについて警察から通告が増えているのが特徴です。

事件化するケースも後を絶ちません。18年3月には東京都目黒区で5歳(当時)の女児が、19年1月には千葉県野田市で小学4年生(同)の女児がそれぞれ亡くなりました。いたましい事件が相次いだことを受けて、対策を求める機運が高まりました。

――悲劇を防ぐことはできなかったのでしょうか?

この2件の事件では、周囲の対応にいくつもの問題があったことが指摘されています。例えば、目黒区の事件では家族は他県から引っ越してきましたが、児童相談所間の引き継ぎが不十分でした。野田市の場合は、女児が学校のアンケートで被害を訴えましたが、教育委員会が適切に対応できなかったこともわかっています。

対策の中核を担う児童相談所は、立ち入り調査や一時保護などの権限を持ちます。ただ、相談所で虐待を担当する児童福祉司は、相談件数の伸びに人数が追いついていません。体制強化は不可欠です。

――政府も対策を進めているようです

政府は18年に、19年度から22年度を対象期間とする体制強化のための新プランをまとめました。児童福祉司の大幅な増員が柱です。17年度の約3200人から22年度末までに約2000人増員することを目指していますが、人数だけでなく一人ひとりの専門性を高めることも必要です。

19年6月に児童虐待防止法などが改正され、この4月に一部をのぞいて施行されました。児童相談所で一時保護などの「介入的対応」にあたる職員と「保護者支援」にあたる職員を分けることなどが盛り込まれました。必要な介入に遅れが生じないようにするのが狙いです。今後さらに、弁護士や医師の配置を進めることにもなっています。

子どもを守るには、地域ぐるみの取り組みが欠かせません。多くの機関がかかわってこそ、虐待のリスクを早期に発見し支援することができます。児童相談所と警察や学校、市町村、医療機関、配偶者暴力相談支援センターなどが連携し、それぞれの役割を果たすことが必要です。