大豆由来のハンバーグなど「植物肉」やビーガン(完全菜食主義者)対応の料理を扱う店が増えてきたわね。欧米などのように日本でも普及するのかな――。ビーガンビジネスの現状と課題について、中村英里子さんと荒井尚美さんが石鍋仁美編集委員に聞いた。

――ビーガンはベジタリアンとどう違うのですか。

ビーガン(vegan)は20世紀半ばに英国で生まれた言葉で、ベジタリアン(vegetarian)の最初の3文字と最後の2文字をつなげた新語です。肉を食べない点は同じですがベジタリアンには魚、卵、牛乳、蜂蜜などを口にする人もいます。動物由来の食材や食品は一切食べない人を指す言葉として当事者たちが使い始めた呼び名がビーガンです。ビーガン料理は魚の出汁(だし)や鶏がらも使いません。

――産業界ではどんな動きがありますか。

米国では、ビーガンやベジタリアンになっても食生活はなるべく変えたくないという人たちに向け、新しい食材や調味料を開発するベンチャー企業が相次ぎ登場しています。マイクロソフトを創業したビル・ゲイツ氏や俳優のレオナルド・ディカプリオ氏らが出資する米ビヨンド・ミートはエンドウ豆などから代替肉を作る会社です。2019年に米ナスダック市場に上場し、取引初日の終値は公開価格の約3倍に高騰しました。

ビーガン向けメニューや食品を提供する飲食店や小売店は世界で増えています。ビヨンド・ミートの製品「ビヨンドバーガー」「ビヨンドソーセージ」は世界各地のスーパーで売られています。投資家はビーガンベンチャーをニッチ(隙間市場)ではなく世界市場を狙えるビジネスだとみています。

ビーガン対応と明記した食材や料理はベジタリアンなどの人たちも安心して選べます。日本でも業務用カレーのレトルト製品をビーガン仕様で生産し、肉を食べたい客には店が後から肉を加えるといった手法も広がっています。

――注目される背景には何があるのですか。

若い世代を中心としたビーガン、ベジタリアン人口の増加です。以前は宗教や動物愛護が動機の人が多かったのですが、近年は健康や美容、芸能人の影響、肉の消費を減らし畜産業がもたらす地球温暖化を少しでも食い止めたいといった理由から肉食を避ける人が増えています。

「週1日は肉を食べるのをやめよう」という「ミートフリーマンデー」運動も広がっています。学校給食や公共施設でビーガン食を用意する例もあります。観光やビジネスで外国との交流が増えたことも後押ししています。