石炭火力発電所をなくしていこうという動きがあると聞いたわ。現実に減らしていくことはできるのかな。そうした動きを進めるうえで、どんな課題があるのかな――。石炭火力発電所の休廃止を巡る動きについて、小倉由梨さんと河野祐子さんに松尾博文編集委員が解説した。

――政府が休廃止を促すのはなぜですか。

梶山弘志経済産業相は7月、温暖化ガスの排出削減に向け、効率が悪い石炭火力発電所の休廃止を促す方針を表明しました。地球温暖化対策の道筋を定めたパリ協定に参加する各国は、温暖化ガス削減に向けた取り組みを本格化させています。石炭は化石燃料の中でも温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出量が多く、英国やフランス、ドイツなどは石炭火力の全廃を決めています。世界規模で脱炭素の流れが強まるなかで、日本も50年に温暖化ガスの8割削減を掲げています。

――石炭火力の輸出支援も見直されるのですか。

アジア以外では発電量に占める石炭火力の比率が約2割なのに対し、アジアでは約6割を占めます。一方、成長が続くアジアでは電力需要が急増し、これを賄うために新しい発電所が必要です。過去20年に建設された石炭火力の9割がアジアにあります。大型の石炭火力を一度建設すると何十年も使い続けます。

海外からは日本政府の石炭火力輸出への支援に厳しい目が向けられています。環境問題や企業の社会的責任を重視するESG投資の拡大を受け内外の金融機関が石炭火力輸出への融資をやめる動きも広がっています。

小泉進次郎環境相の問題提起で、政府は支援条件を厳格化しました。政府系金融機関を通じた融資などの公的支援は、安全保障や経済性などの理由から石炭火力を選ばざるを得ない国に対し、脱炭素に向けた政策転換への関与を条件に高効率設備に限り支援するとしました。

――国内ではどんな石炭火力が残るのですか。

約140基の石炭火力のうち発電効率が低い型は114基、効率が高い型は26基ほどですが、建設中の最新鋭火力も順次運転を始めます。今後決まる基準次第ですが、効率が低い型の多くが休廃止の対象となりそうです。

ただし、休廃止には石炭火力を止めても代替する供給手段を確保できることなど、地域の事情を考慮することが必要です。石炭火力は電力会社だけでなく、製鉄会社など多くの製造業が自家発電設備として保有しています。発電効率や稼働年数で一律に休廃止を求めれば、コスト増を招くと反発もあります。

石炭を含む化石燃料を長期で使い続けるなら抜本的な対策が欠かせません。50年に温暖化ガスの排出8割削減を実現するには、すべての発電所の排出をゼロにする必要があります。それには火力発電所から出るCO2を回収して地中に戻すCCS技術などの実用化を急ぐ必要があります。