副業が解禁になったという話をよく聞くわ。でも企業に勤めている人が副業をやるって、大丈夫なのかしら。先端的な会社は別にして、職場の目が気になるなんてこともありそうだけど――。副業の広がりについて、杉本妙子さんと涌井真弓さんに、石塚由紀夫編集委員が解説した。

杉本さん「大手企業の副業解禁の事例をよく聞きます」

キリンホールディングスは2020年7月に副業を解禁しました。キリンビールやキリンビバレッジなど、主要グループ会社約6千人が対象です。21年からIHIも副業解禁に踏み切りました。こちらは週所定労働時間の半分以上(20時間以上)はIHIでの就労を義務付けていますが、副業のために就業日数や就業時間を減らすこともできます。その分、給与は減りますが、自分の専門能力や知識を生かして稼ぐ道を開けます。

社員を外に出すだけでなく、副業人材の受け入れも広がっています。ヤフーは「ギグパートナー」という名称で副業人材を20年7月に募集しました。約4500人の応募があり、104人を採用しました。10歳の小学生から80歳の高齢者まで多才な人たちが働き始めています。

涌井さん「広がる背景は何でしょうか」

一番の要因は新型コロナウイルス感染症です。厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、20年11月の一般労働者の所定外労働時間(残業時間など)は前年同月比9.6%減の13.2時間です。総実労働時間も同2.7%減っています。減収を補おうと働く側は副業に関心を持ち、業績が厳しい会社もそれを応援しようとしています。

窮余の一策というだけではありません。企業競争力強化に生かそうと考える企業もあります。みずほフィナンシャルグループは19年10月に解禁し、現在約200人が副業しています。閉じた社内環境では均一の人材しか育たないとの危機感でした。社外で武者修行し、その貴重な経験や情報を本業に生かそうという狙いです。

杉本さん「正社員で副業を持つ方は多いのでしょうか」

厚生労働省は20年7月に、副業の実態調査を実施しました。それによると、全体の9.7%が副業に就いていました。ただ、本業の就業形態別でみると正社員は5.9%にとどまります。副業比率が高かったのはフリーランスで29.8%。自営業、会社役員が続きます。副業でもバリバリ活躍している会社員はまだ少数派なのです。

正社員が副業に就きづらい一因に労働時間管理がありました。副業先で雇われて働くときも、勤務先は社員がいつどのくらい働いたのか実態を把握しなくてなりません。総労働時間に応じて過労防止や残業代の割り増し支給に努める必要があるからです。

そして、副業先の就業実態をどう把握するのかが不確かでしたが、20年9月に厚生労働省がガイドラインを修正し、自己申告で構わないとしました。労務管理負担が軽減できるので、今後は副業解禁に動く企業がさらに増えるかもしれません。