エンジンの故障をはじめ数多くのトラブルに見舞われながら、困難を乗り越えて地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)でプロジェクトマネージャを務めた、元シニアフェローの川口淳一郎氏は、小惑星からサンプルを持ち帰る世界初の試みを成功に導いた。川口氏の「仕事人秘録」の第21回では、回収したカプセルの展示や、その後のプロジェクト体制について語ります。

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多くの困難を乗り越えて地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」は、幅広い国民の関心を呼びブームになった。

はやぶさが地球に帰還してすぐにブームが始まったわけではなかったので、比較的スムーズに受けとめることができました。出版物や映画がいくつもつくられましたが、映画の公開は帰還から1年たった2011年秋です。

映画の制作はあいさつに顔を出したくらいでほとんど負担にはなりませんでした。ただ俳優の渡辺謙さんが私の役を演じた映画をみて、妻から「あなたは渡辺謙さんを不細工にしたのよ」と言われたことは笑い話になっています。

はやぶさではプロジェクトの開始から、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のサイトに特設ページを設けるなど情報提供に努めました。はやぶさが帰還するときにはネットで生中継し、パブリックビューイングを開きました。納税者である国民に説明する義務はもちろん、科学技術や挑戦することへの理解をしてもらいたかったのです。

小惑星「イトカワ」のサンプルを持ちかえったはやぶさのカプセルは全国の科学館などで巡回展示。全国69会場で延べ89万人と多くの人たちに見てもらえました。講演会に招かれる機会も増えました。はやぶさが地球に帰還したときに小学生だった子どもたちが、10年たった今、社会人になろうとしています。若者たちがはやぶさを例にして「新しいことに挑戦しよう」という気持ちになってくれればうれしい、と思います。