菅義偉政権は中小企業への支援を続ける一方で、成長戦略の柱の一つとして「足腰の強い中小企業の構築」を掲げています。中小企業に労働生産性の向上を求め、合併による規模の拡大、業態転換、大企業との連携促進を推奨しています。中小企業の間からは「それどころではない」という声も聞こえてきますが、生産性の向上に取り組みながらコロナ危機を乗り越えられるのかどうか、日本経済にとって大きな意味を持っています。

■内藤修・帝国データバンク横浜支店情報部長「苦境の中小、業態転換を模索」

 新型コロナウイルスの感染拡大は、中小企業の経営にどんな影響を及ぼしているのでしょうか。帝国データバンク横浜支店の内藤修情報部長に、同支店が所管する神奈川県の現状を聞きました。

 ――県内企業の景況感は。

内藤修・帝国データバンク横浜支店情報部長

 「景気判断の分かれ目を示す景気DIは1月が35.4と前月(37.0)から1.6ポイント低下し、2カ月ぶりに前月より悪化しました。前月は1.2ポイント改善していましたが、緊急事態宣言の再発出により悪化に転じました。特に小規模企業の悪化(前月比2.4ポイント低下)が目立ちます。主要8業種のうち製造、卸売り、サービスなど5業種が前月より悪化し、特に運輸・倉庫の悪化が顕著でした。一方、不動産、小売りは改善が続きました。巣ごもり需要があるスーパー、家電量販などの『良い業種』と、飲食、ホテル・旅館などの『悪い業種』のばらつきが大きいのが特徴です」

 ――政府や金融機関による支援策の効果は。

 「金融機関による実質無利子・無担保融資、信用保証協会による保証承諾はともに急増しました。コロナ禍が広がり始めた昨年初めには、本来なら借りる必要がない取引先にも金融機関がかなり積極的に貸し出そうとしていました。ところが、昨年秋ごろから、金融機関の融資姿勢は徐々に変化し、選別色が濃くなったようです。雇用調整助成金を活用している機械メーカーからは『政府の支援で従業員の雇用を守れている』と期間の延長を望む声が出ていました。全体として支援策は中小企業の経営の安定に役立っているのではないでしょうか」

 ――先行きの見通しは。

 「県内企業の間には『緊急事態宣言の再発出による自粛ムードや経済低迷の影響が大きい』(広告関連サービス)、『不要不急の外出制限もあり、ガソリンなどの石油類の出荷の荷動きが悪い』(運輸・倉庫)、『設備計画の見直しなど、慎重な企業が増えつつあるように感じる』(鉄鋼)、『自動車関連の設備投資の規模が縮小しないか心配』(電気機械製造)といった声があり、再び景気の先行きに不透明感が強まっています」

 「コロナ禍が広がり始めた当初に融資を受けた企業の多くが、今年5月ごろから順次、返済期限を迎えます。再度、融資を受ければ経営破綻は回避できますが、中小・零細企業にとっては借り入れ過多になるだけで、今年下半期から『諦め型』の倒産や廃業が増えそうです」

 ――政府は中小企業に生産性の向上を求めています。

 「県に所在する1093社を対象に昨年12月〜今年1月に実施した意識調査によると、回答企業530社の19.8%が業態転換の可能性があると回答しました。この回答にはすでに転換済みの企業も含まれています。業種別にみると、旅館・ホテル、娯楽サービス、家具類の小売り、飲食店が多く、コロナ禍で苦境に陥った業種が、業態転換で乗り切ろうとしているのです」

(編集委員 前田裕之)