また、地理的な幅も大事にされています。大手デザインファームIDEOは、デザインリサーチをするために、あるテーマにおける世界の先進地域を複数リサーチすることもあるそうです。

たとえば、新しい住まいを作るというプロジェクトでは、世界でもコミュニティづくりの先進国デンマークの新しいコンセプトの集合住宅と、香港の狭い地域に密集している住宅とを選ぶなど、世界の中でも先進的な場をフィールドワーク先にします。

この地理の幅を活かしたリサーチは、特にヨーロッパのように多様な文化が入り混じっている地域では積極的に活用されています。

また、デザインリサーチで歴史分析を行うことは非常に有効です。

たとえば、電子書籍についてのリサーチプロジェクトに取り組むような場合は、本を読むという体験そのものを、時代を超えてひもといていきます。

15世紀のグーテンベルクの活版印刷や、さらに紀元前の時代の象形文字にまでさかのぼり、人類の歴史を通じて共通の部分は何か、時代の変化に合わせて何が変わってきているのか、という視点から、今の時代に欠けているものや今後ニーズが大きくなってきそうなものを探し出していきます。

最後に、価値の横断です。デザイナーは、良いモノや体験を直に感じることでセンスを磨きます。新しくオープンしたホテルやカフェを訪れたり、普段は行かない最高級の万年筆を買うなど、上質な体験をすることも、質の高いインプットをする例と言えるでしょう。

THINKING
どんな場所を訪れたら、普段の自分が見えていない視点が得られるか?佐宗邦威
BIOTOPE代表/チーフ・ストラテジテック・デザイナー
大学院大学至善館准教授/多摩美術大学特任准教授
東京大学法学部卒業、イリノイ工科大学デザイン研究科(Master of Design Methods)修了。P&G、ソニーをへて、戦略デザインファーム「BIOTOPE」を起業。BtoC消費財のブランドデザインやハイテクR&Dのコンセプトデザイン、サービスデザインプロジェクトが得意領域。著書に『直感と論理をつなぐ思考法』『ひとりの妄想で未来は変わる VISION DRIVEN INNOVATION』など。