■メンバーからのアイデア 心理的安全性が不可欠

石井 面白いですね。何ですか? それは。

高橋 褒めるツールとして使うのであれば、商談のレベルを記載させます。受注まで5段階あるとしたら「1から2に上がった」とか「2から3に上がった」ということを目立つ位置に記載すれば、いくらでも褒める材料になります。こうやって褒めるポイントを見える化して、過剰なくらい褒める。これをやり続けると、不思議といい方向に動くんです。

石井 褒めるって、重要な行為ですね。私の経験でも、過去に結果としてはうまくいかなかったものの、お客様からはこんな反応をもらえた!という報告がありました。それって新しいことにチャレンジすることに対してポジティブな雰囲気があるから、結果は出なくても過程で起きたことを共有できるわけです。結果がうまくいかなければ詰められる文化の組織であれば、誰も話題に出しませんから。

過去の成功体験が通用しない時代であるということは、上司であっても正解を知らないということ。正解がないならば一人ひとりから、アイデアを出してもらうしかない。みんなが色々なことにチャレンジできる環境はまさに、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる、心理的安全性が確保されている環境と言えると思います。

■行動したことを褒めるとまた行動につながる

高橋 マネジャーの方々からすると、部下のメンタルがより一般的に問題になっていますし、事業面では、顧客も情報を持つようになって賢くなっています。つまり、組織面でも事業面でも、マネジメントの難易度が上がっているのです。だからこそ、板挟みになっているマネジャーは、自分たちのチームにおける心理的安全性とはどんな状態かということから考えるべきです。これは今後、組織づくりにおいて当たり前に意識されるポイントになると思います。

よく議論のテーマとして挙がるのは、能力と意欲の問題です。能力はあってやれるはずのことをやらないケースは、きちんと叱った方がいいという時もあります。先ほどから褒めましょうと言っている私ですが、石井さんはどう考えますか。

石井 そうですね。メンバーには十分な業務遂行能力があるのに、やらないケースというのは実際に多いのですが、それは、行動に対してネガティブな見返りを受け続けたから起きている現象です。メンバーは「頑張っても、嫌みしか言われない」と思っているので、行動が減るわけです。つまり、マネジメント側に原因があるという見方もできますよね。

行動分析学では、人は行動した後にハッピーなことがあるとその行動をもっとしようとする生き物だと言われています。少し行動してみたことを過剰なほどに褒められたとしたら、次またやってみようと思うもの。メンバーが行動したら、マネジャーは褒め褒め祭り。ハッピーなことが起きる環境を作ることが大事だと思います。