■「行動」と「行動のクオリティー」、分けて考える

高橋 マネジメント側が悪影響を与えているわけですね。やはりマネジメント側は、「褒めるを徹底する」が基本姿勢でしょうか。どうしても気になるのは、メンバーの仕事のクオリティーの低さですよね。指摘しなければいけない、怒らなければいけないような場面においてのマネジメントについては、どうすべきでしょうか。

石井 大前提として、自分を含めて、誰しもそんなすぐに成長するわけではないということです。その上で、行動そのものと行動のクオリティーを分けて考えるということが大切です。報告という行動を例に考えると、報告の内容・質よりも「行動が起きたかどうか」のほうが重要です。まずは、「報告してくれてありがとう」と伝えるとこから始めましょう。報告のクオリティーをどう上げていくかは、次のステップです。基本はスモールステップで階段を上っていくイメージで、相手のレベルに合わせることが大事です。

営業のシーンで例えると初歩は、メンバーに同行してお客さんとのやりとりをやってみせる。次のステップは、ポイントで指示を出す。もっとレベルが上がれば、確認やリマインドだけで関わる……。レベルを徐々に上げていく方法を行動分析学では「フェーディング」と呼んでいます。

マネジャーの皆さんにアドバイスがあるとすると、「メンバーのレベルの見極めを完璧に!」などと気負わないことです。一度に全てができるなんて幻想で、やってみて調整するというアクションを、繰り返したらいいでしょう。

大事なのは「お客様の様子が普段とちょっと違う気がするんですけど」というささいな違和感が、メンバーから随時挙がってくること。そうすれば、正解がない時代に一人ひとりから、アイデアが上がる組織へと成長できるはずです。

(ライター 伊勢真穂/聞き手は日本経済新聞出版 雨宮百子)

高橋浩一
 東京大学経済学部卒業後、外資系戦略コンサルティング会社を経て25歳で企業研修会社、アルーの創業に副社長として参画。2011年TORiX(東京・千代田)を設立し、代表取締役に。上場企業を中心に50業種3万人以上の営業強化を支援。主な著書に『無敗営業「3つの質問」と「4つの力」(日経BP)『なぜか声がかかる人の習慣』(日本経済新聞出版)。石井遼介
 東京大学工学部卒。シンガポール国立大 経営学修士(MBA)。学生時代から数え、3社を創業。心理的安全性の職場への導入を支援するZENTech(東京・中央)の取締役として、心理的安全性・行動分析の研究、サーベイ開発、統計分析を行うとともに、研修講座の設計・開発を担当する。一般社団法人 日本認知科学研究所理事も務める。著書『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)。