■暴力客が1年後にまさかの再来店

男が店を出た直後、バイト君から連絡を受けたオーナーが駆けつけた。防犯カメラで確認すると、男がバイト君を殴った瞬間がしっかり撮られていた。

オーナー「確実に殴ってる、どうする?」

バイト「許せません」

オーナー「警察、呼ぶぞ」

バイト「ハイ!」

パトカーはすぐにやって来た。事情を聞き、防犯カメラの映像で暴力行為を確認した警察がオーナーに尋ねた。

警察「店に来たら、すぐ連絡してください」

男は翌日、平気な顔でやって来た。警察に連絡すると、すぐさまパトカーが飛んできた。

その後の調べによれば、男はコンビニからそう遠くない場所で、小さな店を妻と2人で営む、やくざとはまるで無縁の人物だった。近隣にあるコンビニの、ほぼ全てで、同じようなトラブルを起こして「出禁(出入り禁止)」にされていることも判明。今や、唯一、受け入れてくれていたのがこのコンビニだったというが、この事件で「立ち寄り禁止処分」となり、行き場を失った。

それからおよそ1年。男が店に顔を出した。

「わあ、来た」

店がざわついた。連絡を受けたオーナーが急行し、男に強い調子で声を掛けた。

「あなた、ここ、出入り禁止ですよねえ」

すると、男は、懐かしそうに店内を見回し、意外なことを口にした。

男(商品の1つを手にとって)「ねえ、これおいしい?」

オーナー「はい?」

男「これ、買ってこうかなあ」

オーナー「それ、売れてますよ」

男「そうかあ、実はかみさんが2カ月前に死んじゃってさあ」

オーナー「え?」

男「おれ、これまで好き勝手ばかりやって、みんなに迷惑かけて。気がついたんだよね。俺みたいなヤツはかみさんが死ななきゃ、わかんないんだなって」

このやり取りを後になって聞いた私は腹が立った。

梶原「奥さんの話まで持ち出した浪花節めいた話は、言い訳にもなってない」

オーナー「でもさ、顔を見ると、すっかり邪気が取れて、以前とは全く違う穏やかな表情でね。最近また買い物に来てくれるんです。店のスタッフに『ありがとう、ありがとう』って腰を低くして。まんざら悪い奴でもなさそうな感じなのよ」

オーナーの懐の深さは賞賛に値するが、狭量な私は許せない。