著名人が両親から学んだことや思い出などを語る「それでも親子」。今回はフリーアナウンサーの馬場典子さんだ。

 ――亡くなられたお父さんは会社を経営されていた。

 「テントなどを製造する会社を継いでいました。仕事はいろいろと大変だったと思いますが、家族には愚痴もこぼさず、懸命に頑張ってくれていたと思います。ただ子どもの目からみても、不安やイライラが表情や態度に出てしまうような分かりやすいところはありました。『愛すべき見えっ張り』とでも言うんでしょうか」

 「普段はといえば、父なりに場を盛り上げようとおしゃべりをしたり、家族をキャンプに連れて行ってくれたりしましたね。私はなぜか囲碁や将棋などの相手もさせられました。父は絶対に手を抜かないので、私は必ず負けて泣いていましたけど」

 ――お母さんは?

 「気持ちが大きくて自分に正直な人。天真爛漫(らんまん)というか、思ったことをすぐ口に出してしまうんですよ。私も『なんでそうなるの』と言い返すから、しょっちゅう口げんかになりました。今思えばお互いさまですが」

 「『勉強しなさい』とはそれほど言いませんでした。ただしつけには厳しくて、食事の作法では箸の上げ下ろしから姿勢まで叱られてばかりでした。言葉づかいもそう。『お父様』『お母様』と呼ばされていたくらいです。おかげで年上の方と接するのも苦にならず、アナウンサーという仕事にも役立ちました」

 ――アナウンサーという職業を選んだ時のご両親は?

 「思いもよらず日本テレビ入社が決まり、母は大喜びでした。父は『好きなことをしたらいいよ』という感じでしたが。社会人になってからは改めて父のありがたさを感じました。それまで働く父の姿はほとんどみていなかったので、日々働き、養ってくれたことに感謝しました」

 ――親譲りだなと思うところはありますか?

 「私が社交的にみえて人見知りで不器用なのは、父に似ているのかなと思う。思うことは口に出さないと気がすまなかったり、相手の言葉を真っ正面で受け止め過ぎてしまったり、感情が先走りする部分は母譲りなのかな」

 ――親孝行は。

 「亡き父とはもっと話しておけばよかったと思います。『昔から頑張りすぎるんだから無理はしないように』なんて気遣うメールを前触れもなく送ってきたことはあったのですが、本音はあまり聞けないままでした」

 「母とは別々に暮らしていますが、海外旅行や温泉によく一緒に行きます。私のブログを読んでは励ましてくれたり、不規則な生活ぶりを心配したり。私の一番の応援団ですね。ただ年齢を重ねた最近は言い返すとしゅんとなってしまうこともあって。親孝行はまだこれから。いろいろあったけど幸せだったと思ってもらえればいいですね」

[日本経済新聞夕刊2018年9月18日付]

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