2020年にヒットしたアルバムを分析することで、通常のランキングでは分からないヒット作を読み解く。「ロングセラー」「40代以上のアーティスト」に続く最終回のテーマは「ジャニーズ」。音楽マーケッターとして市場分析を行っている臼井孝氏が分析する。[※特に注記がない場合、本文中の『』はアルバム名、「」は曲名を示している]

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ジャニーズといえば、コアファンの多さからCDシングル・ランキング1位というイメージがあるが、CDセールス、ダウンロード、ルックアップ(パソコンのCD取り込み)という3部門を集計したアルバムランキングからは何が見えてくるか。20年のBillboard JAPAN HOT ALBUMランキングから考察してみた(集計期間は19年12月30日〜21年1月3日)。

2020年のBillboard JAPAN HOT ALBUMランキングを元にジャニーズ事務所所属アーティストのアルバムをピックアップして作成した(集計期間:19年12月30日〜21年1月3日)。DLはダウンロード、LUはルックアップ(CDのパソコンへの取りこみ)を示す

年間トップ100を見ると、ジャニーズ系の作品は12作。事務所別で見てもその強さは明らかだ。ストリーミング全盛となった現代では、特定の曲が人気でもアーティストが人気とは限らないケースも少なくない。アーティストが好きで、シングルもアルバムもすべて購入するというファンの多いジャニーズ系は、さらに強さが際立つ時代といえるかもしれない。

その中で1位となったのは嵐のオリジナル作『This is 嵐』。20年末で活動休止となったにもかかわらず、21年4月中旬時点でもトップ100入りを継続しており、CDアルバムは累計85万枚を突破。あらためてその存在の大きさが分かる。

今回のランキング表には、各作品の主な収録曲も記載した。これを見ると、大半の作品に自分たちが出演したドラマや映画の主題歌が収録されていることが分かる。ヒット常連のOfficial髭男dismもあいみょんも米津玄師も、ドラマや映画の主題歌となった曲が、ひときわ大きなヒットとなる傾向にある。その大型タイアップをジャニーズ系がこれだけ多く獲得している点が、データを確認していて改めて印象に残った。

2位にKing & Prince『L&(ランド)』、3位にHey!Say!JUMP『Fab! -Music speaks.-』、5位にKis-My-Ft2『To-y2』と紅白出場組のアルバムが上位に並ぶ中で、4位に紅白未出場のジャニーズWEST『W trouble』が入っているのも興味深い。CDセールス14位に対し、ルックアップ23位とさほど順位を落としていないことから、レンタルなど潜在的なファンの多さが読み取れる。近年は、関西ノリのコミカル路線に加え、クールに熱唱する楽曲も増えているので、楽曲をキッカケにブレイクも期待される。

2位に入ったKing & Prince(キンプリ)の『L&(ランド)』。キンプリは2枚のアルバムがランクインした4位に入ったジャニーズWESTの『W trouble』。CDセールスとルックアップの差が少ないのも特徴だという

■気になる配信との関わり

全体にグループが多い中、6位の木村拓哉『Go with the Flow』、8位のKinKi Kids『O album』、12位のENDRECHERI(KinKi Kidsの堂本剛ソロプロジェクト)『LOVE FADERS』が、ソロまたは2人組として健闘している。KinKi Kidsの『O album』は発売が20年12月23日なので、集計期間は2週間しかなく、しかもドラマや映画主題歌は皆無での上位入り。それだけアーティストや楽曲への信頼感が高いということだろう。ちなみに元SMAPの香取慎吾『20200101(ニワニワワイワイ)』も総合で年間51位に入っている。6位の木村が槇原敬之やLOVE PSYCHEDELICOなどかつてのSMAP路線を踏襲しているのに対し、香取はBiSHや須田景凪など新進気鋭アーティストとのコラボにも積極的というコントラストも興味深い。

今回のランキングを見ると、ダウンロード部門の大半が空欄となっていることがわかる。現状アルバムが配信されているのは、嵐とENDRECHERIのみ(いずれもCDより数カ月遅れのためやや順位が低め)で、それ以外はなんとアルバム未配信のままなのだ。

嵐は、CDデビュー20周年となる19年に音楽配信をスタート。以降、代表曲の多くが配信チャートでロングセラーとなっている。実際、ファン以外も耳にする機会が多いドラマ主題歌を数多く手掛ける彼らは配信との親和性が本来高いはず。21年3月にKAT-TUNがシングル「Roar」(ドラマ『レッドアイズ 監視捜査班』主題歌)でダウンロードとストリーミングを初めて解禁した。こうした挑戦で、どれだけヒットが拡大していくのかも注目したい。

臼井孝
1968年生まれ。理系人生から急転し、音楽マーケッターとして音楽市場分析のほか、各媒体でのヒット解説、ラジオ出演、配信サイトの選曲(プレイリスト【おとラボ】)を手がける。音楽を“聴く/聴かない”“買う/買わない”の境界を読み解くのが趣味。著書に「記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝」(いそっぷ社)。