9月14日(水)に東京国際フォーラム ホールA(13時/18時の2回公演)で開催される「スーパー・ボーカル・トリオ・コンサート」に出演する(左から)井上芳雄、天童よしみ、山内惠介

井上芳雄です。しばらくミュージカルの公演が続きましたが、9月はまた違ったジャンルに挑戦します。9月14日には天童よしみさん、山内惠介君との3人で「スーパー・ボーカル・トリオ・コンサート」と題して、演歌、ミュージカルからロック、ポップスや世界の名曲までいろんなジャンルを歌うコンサートを開きます。9月16〜19日は橋爪功さんの朗読劇企画「リーディングプロジェクト」の第1弾公演に出演します。

「スーパー・ボーカル・トリオ・コンサート」の企画が立ち上がったのは3年ほど前なので、コロナ禍の前になります。天童さんや山内君とは、NHKの音楽番組『うたコン』や『はやウタ』でご一緒することがあって、リハーサルで聴いた歌のうまさにびっくりしました。それで僕のラジオ番組にゲストに来ていただいたりするうちに、「何か一緒にできたらいいですね」という話になり、今回のコンサートにつながりました。天童さんと山内君は普段から仲がいいので、3人で意気投合したという感じです。

天童さんは、歌が上手なのはもちろん知っていましたけど、実際に生で聴いたときの突き抜けるような歌声は本当に衝撃的でした。山内君と僕は同年代で、同じ福岡の出身。「演歌界の貴公子」と呼ばれているのも、プリンスの僕としては身近に感じます(笑)。 

3人でのコンサートはもちろん初めて。僕も実現するとは思っていなかったので、いまだにちょっと不思議な感じではあります。違うジャンルの方々ですが、僕は歌がうまい人と一緒に歌うのが大好きなので、ただただリハ−サルで聴いていたときと同じように「うわー、すごいな」という経験をしてみたいという思いが強いですね。

お話を聞くと、演歌の世界はミュージカル界と成り立ちが違っていて、お客さまに聴いていただくやり方が全く違うのも新鮮でした。演歌の皆さんは基本的には1年に1枚新曲のCDを出して、キャンペーンやコンサートで全国を回って、そのシングルを売り続けて、最終的には(NHK)紅白(歌合戦)を目指すそうです。2〜3カ月で演目を変えていく演劇界とはまた違うサイクルで活動されています。お2人も東京にいるほうが短いんじゃないかというくらい、忙しく全国を飛び回っています。僕も劇場の関係で仕事のスケジュールが決まるのが早いので、そういう3人が一堂に会するという点でも、希有(けう)なコンサートの機会です。

■天童さん、山内君と歌う『ボヘミアン・ラプソディ』

曲目はすでに一部が発表されています。決めるに当たっては、最初みんなで集まって、どんなことをやりたいか話しました。そこで出たのが、それぞれが自分のジャンルを歌うのは前提として、お互いのジャンルに挑戦してみようと。僕は演歌を歌ってみます。

演歌といえばこぶしですよね。僕は「うーん」とうなる、誰でもできるものかと思っていたのですが、そうではありませんでした。こぶしが回るのは1つの技術で、いくらやっても回らない人もいるそうです。つまり特殊技能で、天童さんはそれがすごく上手です。

天童さんに、どうやってこぶしを回せるようになったんですかと聞いたら、小さいころから親に演歌を聴かされて育っていて、お父さんの自転車の後ろに乗って、ガタン、ゴトンと揺れるのに合わせて歌っていたら回るようになった、と教えてくれました。こぶしの種類も、激しいものからシンプルなものまでいろいろあるそうです。山内君を見ていると、のどだけでこぶしを回すのではなくて、体全体で回しています。どうやっているのか、今回学んでみようと思っています。もちろん、すぐに回るとは考えていませんけど。

本当にいい曲を3人で歌うコーナーもたくさんあって、J-POP、洋楽からシャンソン、ロックまで、幅広いジャンルの世界の名曲を歌うことになっています。なかでも目玉というか、一番大変そうなのがクイーンの名曲『ボヘミアン・ラプソディ』を3人で歌うことです。これは大チャレンジでしょうね。

ミュージカルからのデュエットだと、僕と天童さんで『ルドルフ ザ・ラスト・キス』から『サムシング・モア』を歌います。天童さんは何を歌ってもうまいので、ミュージカルの曲も絶対にいいと思うんです。日本であれだけ地声が伸びやかに出る人はそういません。ダイアナ・ロスさんのようなモータウン系の曲も合うんじゃないかなと思って、『ワン・ナイト・オンリー』をお願いしました。ジャンルを超えて、素晴らしい歌声を聴かせてくれるに違いありません。

山内君とは『エリザベート』から『闇が広がる』をデュエットします。彼は演歌の中でも、すごく特徴のある歌声です。哀愁というか色気というか、歌声そのものに独自の色があります。もちろん僕たちミュージカル俳優の声にもあるとは思いますが、普段は役の色で歌うので、強い色が出るようには歌いません。でも演歌は歌い方が全然違うので、山内君の声を聴いていると「こういう歌声っていいな」と思います。その山内君がミュージカルやポップスを歌ったときに、またどういう色になるのか、楽しみです。

番組で歌うときももちろん一生懸命やるのですが、その場限りで終わってしまうのが残念でした。でもコンサートだと、3人でいろんな打ち合わせをしたり、グループラインをつくって「この曲はどういうふうに歌おうか」と相談したり、ああだこうだとやっていると、また違ったつながりが生まれてくるので、とても楽しいです。

まずはやってみようという、お2人の姿勢や歌への向き合い方も勉強になります。僕が、「『ボヘミアン・ラプソディ』ちゃんと歌えますかね」と不安になりながらも提案すると、天童さんは「チャレンジするいい機会だと思うので、頑張ってやりましょう」と、受け入れてくれます。大御所なのに、謙虚で前向きな姿勢に勇気づけられます。山内君は3人の中で一番年下で、こういう曲を歌ってみたいというフレッシュなアイデアをたくさん持っていて頼もしいし、やっぱりこれからの演歌界を背負っていく1人なんだなと感じました。お2人とも毎日当たり前のようにたくさん歌っていて、鍛え方が違うというのかな。やっぱり、違うジャンルの人と新しいことに挑むのは面白いですね。