新型コロナウイルス感染で、重症化につながる基礎疾患の一つとして注目された糖尿病。若い世代でも増え、放置すると心筋梗塞など深刻な疾病につながりかねない。発症の仕組みを知り、適切に予防したい。

糖尿病は、血液中の糖の濃度である血糖値が高い状態が続くことで、血管や細胞が傷つく疾患だ。その結果、全身に様々な合併症が現れる。初期段階は自覚症状がないのが特徴。杏林大学医学部(東京都三鷹市)の安田和基教授は、「合併症の症状が現れたときは既に進行している状態」と説明する。

網膜症、腎症、神経障害が糖尿病の3大合併症とされる。糖尿病による網膜症は緑内障につぐ失明の原因疾患であり、腎症は人工透析を必要とする病気の1位を占める。神経障害が進行すると痛みや熱さを感じなくなり、けがややけどを負いやすくなる。

また、血管を傷つける糖尿病は動脈硬化のリスクを高め、脳卒中や虚血性心疾患の原因にもなる。免疫機能を低下させるために、感染症にかかりやすくなる。うつ病、歯周病、がん、認知症との関連も明らかになっている。

血糖値が高い状態が続くのは、すい臓から分泌されるインスリンが不足したり機能しなくなったりするためだ。

通常、食事をとると血糖値が高まり、インスリンによって血液中に増えた糖が細胞に取り込まれエネルギーとなる。糖尿病には、このインスリンがほとんど分泌されなくなる1型と、インスリンの分泌量の低下や効きが悪くなる2型がある。

このうち日本人の糖尿病の約9割を占めるのが2型。40歳以上に多く、遺伝的な体質、運動不足や食べ過ぎなどの生活習慣、ストレスや加齢などが関わっている。「同じような生活をしていても、2型の発症には個人差がある」(安田教授)。一方、1型は小児を含め幅広い年齢で発症する。免疫の異常などが関係するが、原因は不明なところも多いとされる。

厚生労働省の2016年「国民健康・栄養調査」によると、糖尿病有病者と予備軍は、いずれも約1000万人。高齢者の増加のほか、小児を含む若い世代で2型の発症が目立つようになった。むさしの糖尿病・甲状腺クリニック(東京都武蔵野市)の田口学院長は「幼少期からの運動不足や、糖質過多の食習慣の影響も考えられる」と話す。

日本人は欧米人に比べて体質的にインスリンを分泌する力が低く、糖尿病になりやすい。そこに食生活の欧米化が加わったことも、患者数増加の要因とされている。また、「最近増加傾向にある低出生体重児は、成人期の糖尿病発症リスクが高い」と安田教授は指摘する。

糖尿病は、血液検査で診断がつく。治療は初期の場合だと食事療法と運動療法を組み合わせるが、血糖値の変動が一定レベルを上回ると、飲み薬やインスリンの投与など薬物治療が行われる。

また、合併症が起きたらその治療も必要になる。例えば、糖尿病腎症が重症化すると人工透析が必須となる。人工透析は「1回4〜5時間を週3回。患者さんの苦痛と負担は大きい」(田口院長)。人工透析の医療費は1人あたり年間約480万円だが、保険で賄え、国の年間負担総額は1兆5700億円と推定されている。

糖尿病対策で問題なのは、健康診断などで「今の生活のままでは糖尿病発症のリスク大」と指摘されても、自覚症状がないため放置する人が少なくないことだ。

高血糖を指摘されたら早めに専門医にかかる必要がある。何よりも若いうちから暴飲暴食を控えて肥満を予防し、適度な運動を心がけたい。

(ライター 仲尾匡代)

[NIKKEIプラス1 2020年6月13日付]