「こうした人たちは、下見をしたうえで、接近しやすく、逃走経路も確保され、直感的に良いと思えば、今だ!のタイミングで犯行を遂行します。インターネットも同様に、その子どもの投稿などを確認して下見をします。興味を引く話題をちらつかせながら、優しく接近し、いつの間にか情報を巧みに吸い上げ、いつの間にか『写真を送らねばならない状況』や『会わざるを得ない状況』に子どもを追い込みます」

 「ネット上で声をかければ、路上のように周りの人に怪しまれるリスクがありません。子どもが自分から近づいてくることすらあるので、犯罪者にとってはとても合理的なツールなのです」と清永さん。

 ネットの世界で相談相手として会話を重ねるうち、誰にも怪しまれないまま、どんどん親しくなってしまうのです。そして、ある日、突然、現実世界で子どもの前に現れ、犯行に及ぶ。そんな「ステルス型」の犯罪が増えているといいます。

 「保護者が事態に気づいたときには深刻度が増しているケースが多くなっています」というから、子どもがどんな人とつながり、どんな内容を交わしているかはぜひ、把握しておくべきでしょう。

■相次ぐ「自画撮り被害」

 警察庁の調査によると、SNSを通じて児童買春や児童ポルノなどの犯罪被害に遭った子どもは1736人、また脅されたりだまされたりして自分の裸をSNSなどで送らされる、いわゆる「自画撮り被害」に遭った子どもは480 人(平成28年 警察庁統計)に上ります。

 直接の被害に遭っていなくても、運動会など学校行事の画像や動画の背景から学校が特定できるものや名札が写っているケースも多々あります。「子どもたちは、学校や個人が特定されるとどうなるかということにまで考えが及んでいないことが大半です。知らない人からの最初のアクセスは、こういうささいな情報の露呈から始まるのです」と清永さん。

 実際の事例を見てみると……

・Twitter上に上げられた体育祭の写真を集められ、学校名や写真の人物名が特定されて、勝手に個人名のみならずその子どもの他の写真などがネット上で拡散された。
・広島県の小学校教諭が千葉県に住む小学生女児に上半身裸の画像を撮らせ、無料通信アプリLINEで自身のスマートフォンに送らせたとして逮捕された。

 男子も例外ではありません。

・静岡県湖西市の市議が当時、中学3年生だった横浜市の少年に下半身の写真を撮影させ、LINEで送信させたなどとして逮捕された。

「中学生や高校生では交際中に恋人に自分の裸の画像を送ってしまったことから後日脅され、レイプなどの被害に遭っている例もあります。他人だけでなく、近しい人との間でもトラブルや犯罪を引き起こすケースが後を絶ちません」

悪意を持った大人が子どもたちの心の隙間を狙い、巧みに近づいてくる(写真はイメージ=PIXTA)

■合法と非合法のグレーゾーンで自分を切り売りする子どもたち

 清永さんによると最近は「腕や足など体の一部ならいいだろう」と知らない人に画像を送ってしまうということも増えているのだそう。「顔が写っていなければ大丈夫といって、子どもたちはグレーゾーンで自分を切り売りしています。『写真を送ってくれたら、レアなコンサートチケットと交換するよ』など、交換条件を提示されるケースもあります」。

 子どもたちは初めは顔の写っていない上半身の写真を送りますが、「これでは足りない」と言われ、全身の写真を送る羽目になる。こんなふうに巧みに操られるケースも少なくないのです。

「たとえ近しい人であっても、自分の体を切り売りしてはいけないと教えてください。バストも性器も腕や足の一部もすべてあなたの大事な体であり、守らねばならない尊厳なんだ、ということを大人は教えていかないといけないのです」

■NOと言える子に育てよう

 フィルタリングで親が制限をかけることができても、中学生になると部活の連絡はSNSで、ということも出てきます。小学校高学年から中学校でスマホを使うのであれば、「小学校1年生くらいから、この状況はあやしい、おかしいと感じる嗅覚を育てることが大切です」。

「安全教育の一番の目的は子ども自身がしっかりと自己判断、自己決定をし、自分の行動に責任を持つ力(これを大人力といいます)を持った大人にしていくことです。おかしな接近をしてくる人を見極めて、路上であろうがSNS上であろうがこちらの気持ちを無視したしつこく無理な要求、体や心を傷つけるような声掛けなどに『NO』を言える力をつけることが必要です」

 でも、どうしたらそんな力をつけられるのでしょう。

「子どもたちは、うーん、まあいいか、といった曖昧な意思表示をすることで日ごろの人間関係を円滑にすることが多くあります。また『いいよ』『はい』とすべて肯定的に言えるような子育てがなされていることも多いでしょう」

「でも、危機時においては『いいえ』と言えることはとても重要です。それには、日ごろから沢山色々な人とのコミュニケーションを積み重ねること。いざというとき断ることができる力(コミュニケーション力や大人力)を作るためには、例えば『消しゴムを貸して』と言われたとき、『今は私が使っているから貸せない。でも、使い終わったらいいよ』など、普段の生活の中で実際にやり取りを経験することが大事です」

 こういった経験を積むことで、理不尽に『あなたの大切なものを頂戴』と言われたときに、自分の力できっぱりと断ることができるのでしょう。