仕事や結婚に対する考え方の変化にともなって、多様化していくライフスタイル。そのなかから「おひとりさまライフ」を選択し、自由な生活を謳歌しているという人も増えているのでは? そんな女性が共感せずにはいられないアラサーのおひとりさまヒロインを描いた話題作が、のんさん主演の映画『私をくいとめて』です。

■おひとりさま女性が抱えるリアルが描かれている

主人公となるのは、会社員として働いている31歳の黒田みつ子。平日は仕事に追われているものの、休日になれば興味のあることにチャレンジしたり、好きなところに出かけたりと、おひとりさまライフを満喫していました。楽しく過ごせている理由は、脳内にもう一人の自分である相談役の「A」がいるから。困ったことがあれば、いつでも正しいアンサーをくれていたのです。

そんな平和な日々が続くと思っていたみつ子の前に現れたのは、年下営業マンの多田くん。劇中では突如舞い降りてきた久々の恋心に戸惑うみつ子が、「A」とともに新たな一歩を踏み出そうとする姿が描かれています。

原作は、芥川賞作家である綿矢りささんによる同名小説。女性たちからの支持も高い綿矢さんが、アラサー女性の抱える葛藤をリアルに描いた作品として知られています。その世界観を見事に映像化したのは、2017年にヒットを飛ばした映画『勝手にふるえてろ』以来の綿矢作品コラボレーションとなる大九明子監督。先月行われた第33回東京国際映画祭では、今年唯一のコンペティション部門である「TOKYOプレミア2020」部門で観客賞を見事受賞しました。幅広い観客からの共感度の高さは、すでにお墨付きと言えそうです。

■のんさんにしか演じられない魅力的なキャラクター

今回、作品に大きな魅力を与えている存在となっているのは、ほかでもないみつ子を演じている女優のんさん。もう一人の自分とひたすら話し続けるという難しい役どころも、のんさんが持つ透明感といまだに残る少女っぽさとの絶妙なバランスによって、ただのこじらせ女子で終わることなく、チャーミングなキャラクターに仕上がっています。「のんさんにしか演じられないのでは?」と思わせるほどのハマり役です。原作者の綿矢さんも「最高の方々に演じてもらえて喜びを隠せない」と太鼓判を押し、監督も「あんなに柔らかい空気を漂わせていながら、内側に高温のマグマみたいなものを持っている人」とのんさんを絶賛しています。

のんさんの周りを囲む豪華な共演者たちにも注目です。まずは、相手役の多田くんにキャスティングされた、映画やドラマで大活躍中の林遣都さん。真面目で柔らかく、初々しい年下男子の多田くんを好演しています。年を重ねたことで経験が邪魔をしてしまったり、若い頃のように勢いだけではいけなくなっていたりするのが大人の恋愛。それを体現しているもどかしい2人のやりとりには、思い当たる人もいるかもしれません。

映画『私をくいとめて』(c)2020『私をくいとめて』製作委員会