普段はあまり意識しない股関節。立ったり歩いたりのほか、様々な運動においても重要な役割を果たしている。年を重ねても関節の可動域をしっかり保つことで、腰や膝(ひざ)に痛みがなく動きやすい体を維持しよう。

股関節は大腿骨と骨盤が接する部分の関節を指す。骨盤の寛骨臼(かんこつきゅう)というお椀状のところに、ボールの形をした大腿骨の骨頭(こっとう)が入り込んだ構造だ。骨盤で体重を支えることと、膝の屈伸や歩行など脚を動かすことを、円滑に連動させている。

しかし、座りすぎや運動不足、加齢などで股関節の周辺の筋肉は、こわばったり衰えたりしやすい。放置すると股関節の可動域が狭くなり、体の動きが鈍くなるほか、腰痛や膝痛を起こしかねないので注意が必要だ。

股関節の障害は痛みが出てから気づくことが多い。実際はそれまでに「しゃがみにくい」など様々な変化が起こっている。普段から異常がないか気にかけ、周辺の筋肉を動かしておくことで、股関節の不調を防ぐことができる。

まずはチェック。股関節周辺に(1)違和感がないか確認しよう。あぐらをかいて片膝を立てる。立てていない方の膝に軽く手を乗せ、股関節の開きにくさや違和感がないかを見る。左右に違いがあるかも確認。変化があれば筋肉の張りや衰えが想定される。

続いて、股関節まわりの筋肉をほぐす。最初はイスに浅めに座り、リラックスした状態で緩やかに(2)脚の開閉を行う。さらに、片脚を斜め前に軽く伸ばし、つま先から腿の付け根まで脚全体を(3)内・外へ回す。

座りっぱなしや立ち仕事が続いたときは(4)臀部(でんぶ)ストレッチがお勧め。イスに座った状態で片足をもう一方の膝に乗せ、背筋を伸ばした状態で息を吐きながら軽く前傾する。

股関節がほぐれてきたところで、周辺の筋力アップ。まずは(5)横向き開閉。床に横向きで寝転び、脚をそろえ両膝を曲げる。そして片方の膝を開いて戻す。できるだけ骨盤が床に垂直に立つようにして、臀部の動きを意識する。

次は(6)膝曲げ運動。横向きに寝転んだまま両脚を軽く曲げる。そして、上側にある膝を90度程度に曲げたまま前後にゆっくり動かす。

さらに臀部に直接働きかける(7)横に上げ・下げ。よつばいになり、片膝を90度程度に曲げたまま横方向に上げ下げする。よつばいを保つ時には、肩が手首より前に出過ぎないように。手首を痛めやすいので注意しよう。

筋力の動きも滑らかにしたい。日常生活やスポーツでのパフォーマンス向上には、(8)膝を上げて回す運動が有効だ。机など安定した物に手を添えて立ち、片方の膝を引き上げ丁寧に前後に回す。

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2017年3月に始まった「体操編」の連載は、今回で終了します。私たちは腰や膝、肩などの変調を痛みというサインが出てから察知することが多いが、その前に気づきたい。日ごろから「動きにくさ」がないかなど、小まめなチェックとメンテナンスを心がけ「動きにキレのある体」を維持していただきたい。

(早稲田大学スポーツ科学学術院 荒木邦子)

[NIKKEIプラス1 2021年3月6日付]