■ハイブランドの飲食店やホテルで展開

そんなクラフトソーダの一つが、スタジオオカムラ(高知市)が、「はるのテラス」ブランドで製造販売する、国産ベルガモットを使用したクラフトソーダ「ベルガモットスパークリング」だ。シャンパンに代わるノンアルコールドリンクとして、銀座ブルガリ イルリストランテ、ホテルニューオータニ、ハイアットリージェンシー箱根、リゾートトラストといったハイブランドのレストランや高級ホテルなどで採用されている。

「ベルガモットスパークリング(500ミリリットル)」(写真撮影:桑原恵美子)高知県の根ショウガ生産量は全国の4割を占める。その中で1%前後しか栽培されていない「黄金虚空蔵II(おうごんこくうぞう2)」と、14年に日本で初めて量産に成功したかんきつ類の一種、国産ベルガモットを使用。ベルガモットは真空減圧蒸留法で低い沸点で果皮のオイルを抽出しているため、より爽やかな香りを多く引き出すことができるという(写真撮影:桑原恵美子)

特徴は、2日間かけてゆっくりと炭酸ガスを溶かし込んだことによって、シャンパンのように細かくデリケートな泡が立つこと。そこにショウガの刺激とベルガモットのりんとした上品な香りがミックスされ、アルコール飲料を飲んでいるような気分が味わえる。

はるのテラスの商品の外商などを担当する、スタジオオカムラの蔵田克巳氏によると、開発当初のターゲットはお酒を飲めない女性。飲用シーンは、女子会やパーティー、結婚式などの乾杯などを想定していた。

「大手メーカーの炭酸飲料と比較すると価格は高めだが、ノンアルコールでも華やかな気分になれる、高級感のある大人向けのドリンクがあれば、受け入れられると考えた。ボトルのデザインも、そうした場にふさわしいものを意識した」(蔵田氏)

■温暖化によるミカン農家の不安が発端

はるのテラスは00年に写真館とベーカリーカフェの複合店舗としてスタートし、店の駐車場の一角で地元産品を紹介する小さな市場を始めた。やがて夏場に収入が途絶えるかんきつ農家のために、新たな収入源となる商品の開発を手掛けるようになり、09年に開発したのが、摘果する酸度の強い青ミカンを酸味料として使用した「黄金しょうがのジンジャーエール」だ。

「化学的な酸味料を使用せずに酸化を抑えられる上、完熟ミカンよりも爽やかな青ミカンの香りも加わる。大手メーカーにはできないことなので、強みになると考えた」(蔵田氏)。同商品は現在、世界的に有名なハイブランドのショップで、ウエルカムドリンクとして採用されている。

国産ベルガモットの栽培に着手したのは、高知県の特産である温州ミカンの農家が相場の下落と需要の低迷に苦しんでいたことと、温暖化の進行によって栽培不適地になる可能性が高いという将来的な不安があったこと。「年間平均気温があと0.5度上昇すれば、高知県も温州ミカンの栽培適地ではなくなり、質の高い温州ミカンが栽培できなくなるというデータがある」(蔵田氏)

そこで温州ミカンの代替品種として09年にベルガモットの栽培計画がスタート。11年から栽培に着手し、世界最高品質といわれるイタリア・カラブリア地方の品質を目標とした。14年にはベルガモット200キログラムの収穫に成功。それまで小規模で栽培していた農家はあったが、産業ベースでの栽培成功は日本初だったという。

14年、栽培に成功した「土佐ベルガモット」(写真提供:スタジオオカムラ)

さらに真空減圧蒸留法を使用した原料から抽出したオイルで商品を開発。翌15年にベルガモットスパークリングを発売すると、直後に伊勢丹新宿店で取り扱いが始まるなど注目された。

蔵田氏が考える地方のクラフトソーダ・メーカーの強みは、大手では手掛けられない素材や製法を採用していること。高知県でのベルガモットの現在の収穫量は年間4トン前後にまで増えているが「大手メーカーが全国発売できる量には程遠い」と語る。

同社では現在、9種類のクラフトソーダを含む14種類の飲料を販売。09年のスタート時は全体で月産3000本程度だったが、現在は月産約1万5000本を生産している。同社全体では売り上げも13年ごろから伸び続けている。コロナ禍での飲食店の売り上げ減少に伴い、微増程度にとどまっているものの、今後はノンアルコールドリンクが定着するとみて、大きな期待を寄せている。