「予定はことごとく崩れる。まあ、そういうものですよね、人生は」。プライベートでは人生設計通り、大学時代からの交際相手と23歳で結婚。しかし、「計画が狂ったのが子どもですよ」。3、4年の不妊治療を経て「家庭がとっても暗くなった。『もういいんじゃない』と諦めました」。仕事でも思わぬ事態に。思い入れのある上野駅で、当時計画されていた超高層百貨店・ホテルビル構想を担う部署に異動したものの、「配属されたその日に計画が見直しに」。しかし、そこからの日々が後のエキナカ事業への素地を培うことになる。

入社2年目に入り、同期は皆、新しい部署でバタバタ忙しく動き回って成長している。血気盛んな頃です。ところが、私だけ(計画見直しで)雲行きが怪しくなってしまって………。やる気まんまんで(新職場に)いったら、「由美ちゃんが来たけど、仕事ねえな」と。私以外は男性のベテラン社員たち10人ほどでした。プロジェクトが止まったことで、みんな、戸惑っている。やることがなくてお給料をもらっているのも何なので、JRが百貨店をつくる計画を持っていたこともあり、「百貨店のリサーチに行っていいですか」と申し出ました。すると、「あぁ、いってらっしゃい。いってらっしゃい」と。

きょうはあそこの百貨店、あしたはあそこへと、あちこちの百貨店に足を運んでは、全フロアを見て回りました。おかげでフロア構成図が頭に入りました。すると気づくことがあるんです。紳士服はフロアのどこにカジュアルゾーンがあって、どこにオーダーのゾーンがあって、あ、お店が別でもこれは一緒なんだな、と。食品フロアなら、華やかなスイーツから入って生鮮3品(魚・肉・青果)があるんだな、とか。

それが分かると、今度は例えば、食品売り場の水周りはどうなっているんだろうと知りたくなる。たまたまチャンスがあって、その水周りのことを質問できると、フロア構成図はもう頭に入っているから、店の裏側から「ここはこうなっているんですか」など質問ができる。好奇心が旺盛で、自分のエネルギーを使うことに伴うロスを恐れないタイプなんです。

当時はインターネットもありません。ですから、雑誌や新聞の記事の切り抜きを手に、休みの日には電車に乗って、おいしそうなお菓子屋さんや評判の良いパン屋さんを見て回っていました。(キャリア形成のあり方として)合っているかどうかわからないですが、一生懸命やってしまうような性格だったから、「目の前のことに一生懸命」を実践した。それが後になってエキナカ事業を手掛け、テナント誘致などをする際に生きてきた訳です。

(キャリアを重ねていって)忙しくなると、そうしたお店回りはできなくなってしまいます。土日にお店回りをしながら、キラっとしたものを探したり、「この会社はもっとこういうことができるのではないか」という目でディスプレーを見たりしたことが商業施設開発での大きな素地になりました。

自身の経験を踏まえ、「目の前のことを一生懸命やる」を後進女性たちへのアドバイスに挙げ、こう補足する。

「目の前のことを一生懸命やる」とはどういうことか。与えられた仕事をやるとしても、何をもってして100%やったといえるのか、考えてみてはいかがでしょうか。

例えば私の場合、入社当初「現場に行きたい」と希望を出したところ、その希望に沿う形で最初に配属されたのは旅行センターでした。配属されたからには「現場」なので、仕事があがったら(その日の業務が終わったら)、あっちこっち駅を見て回り、家で勉強もした。その職場に在籍したのは4カ月でした。長い期間ではありませんが、せっかくそこにいる間に試験の時期が来るんだったら、ちょっとトライしてみようと旅行業務取扱管理者の資格も取得しました。国内旅行の資格だけですけどね。

懸命にやっていると、誰か見ていてくれる人がいます。そのときも、「俺、もう取ったからな」と問題集をくれる人がいたり、「あの旅行パンフレット、見たかい? 面白いところいっぱいあるぞ」と教えてくれる人がいたり。エキナカの事業を進めていたときもこんな体験をしました。ある社内調整ができなくて困っていたときのことです。すぐにでも決めないと、プロジェクトが先に進まなくなるような切羽詰まった状況にありました。そのとき、まったく関係ない部署の人が「Aさんに『うん』と言わせたいなら、BさんからAさんに言ってもらえ」と助け舟を出してくれました。周りは見てくれているものです。