DX(デジタル・トランスフォーメーション)があらゆる分野で進行しているが、クリニックなど街中の医療現場は他業種に比べ遅れているという声がある。積極的にDXを推進して新しい医療サービスの在り方を提言する医師にその目的と取り組みについて聞いた。

病院で診てもらいたいが長い待ち時間がおっくうで行きそびれた、という経験をした人は少なくないだろう。

「待たされる心理的負担で患者が治療、投薬などのタイミングを逃し、症状を悪化させることは避けたい」と話すのはアリオ北砂内科(東京・江東)の八十島唯義院長。

妻の緑院長による皮フ科・アレルギー科も隣接し、連携した診療・治療も行う。八十島夫妻はDXに取り組む目的を「患者が待つ感覚を解消し、一人ひとりと向き合う時間を確保すること」と説明する。

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クリニックの業務を効率化できないか検討したところ、受付、電子カルテ、会計など個別に優秀なシステムはあるが、全てをシームレスにつなぐしくみはなかった。

シームレスでないと、連携のために医師やスタッフの手作業(入力やコピー)が発生し、結局それが待ち時間増につながる。八十島院長は複数のベンダーの協力を得て、1年がかりで独自のシステムを作り上げた。

患者が自宅からオンラインで順番取りし、Web問診に答えると、その結果が電子カルテに反映され、診察までの事務手続き時間を大幅に短縮できた。電子カルテに対応し、電子マネーや交通系ICカードが使用可能なキャッシュレスのセルフレジも連動するので、診察後すぐに会計できる。診察後の会計処理だけで15分かかることもあったが、それがほぼゼロになった。

DXによる救急外来の革新をもたらしたのが2016年創業の「ファストドクター」だ。大学病院で働いていた医師で創業者・代表取締役の菊池亮氏が救急外来現場の逼迫を目の当たりにして「自分に何かできることはないか」と悩み続けた末、起業に至った。

夜間・休日の救急診療に対応している医療機関は限られ、急病時に医療機関へアクセスが困難な高齢者などにとって、選択肢は救急車しかない。ファストドクターはそこに看護師による相談と医師の往診という新たな選択肢を加えた。

まず365日・24時間体制で電話、インターネット、LINEなどで急病やケガの相談を受け付ける。そこで「トリアージ(重症度や緊急度に応じた患者の振り分け)」の結果に応じて119番との連携、患者への地域の救急病院紹介、さらに通院が難しい患者には提携医療機関の医師の往診など、適切な選択肢を示す(図参照)。