危機一髪の窮地から救い出してくれたのは、特撮ヒーローだった――。テレビ番組の話ではない。日本有数の高級革手袋メーカーが演じた逆転劇の筋書きだ。舞台は手袋の主要産地である香川県、主役は親族6人で切り盛りする出石手袋(さぬき市、出石尚仁社長)。日本にはファッション分野でキラリと光る業者が多いが、サプライチェーンの激変や後継者不足で苦境が続く。オタクを味方につけた零細企業の一手は、起死回生のヒントになるだろうか。

ぴたりのサイズはもちろん、イニシャルを入れたり、愛車のデザインに合わせたり。フルオーダーのぜいたくなドライビンググローブは出石手袋の看板商品だ

■知る人ぞ知る高級革手袋、10年前は経営どん底

富裕層がフルオーダーで作る紳士物正装用白手袋。あるいはフェラーリやポルシェのオーナーが求めるドライビンググローブ。出石手袋が製造する年2000〜3000双の手袋は、鹿革などの上質な皮革を使った知る人ぞ知る高級品だ。今は続々と増える注文で手いっぱいだが、10年ほど前には経営はどん底だった。

香川県は国内の手袋生産の9割を占める。東かがわ市を中心に一時は300の業者がひしめいた。今も100ほどの零細企業が経営を続けるが、ほとんどがOEM(相手先ブランドでの生産)。後継者難や顧客企業の海外への生産移転で廃業が相次いだ。