2020年、ファッション界でサステナブル(持続可能性)への関心が一段と高まった。英国やイタリアではクラシックなジャケットを手入れしながら次世代へと譲り渡す習慣があるという。これこそ服を大事にするサステナブルな行為といえるだろう。石津家でも3代に渡って着続け、今なお現役という服がたくさんあるそうだ。前回に続き、石津祥介さんと塁さん親子が、VAN(ヴァンヂャケット)創業者、石津謙介さんのスタイルを語り合う。謙介さんの服へのこだわり、装いの哲学も継承されていく。

■謙介氏が残した服 6畳の部屋いっぱいに

――どちらのコートも石津謙介さんのものなんですね。古さを感じさせません。

塁「今はどちらも僕が着ていますけど、50年ではきかないくらい前のものです。このコートはリバーシブルで、Kentのもの。襟などの返しがバイカラーになっていいでしょう」

――VANのトレンチは内側の赤との対比が美しいカーキ。素材もいまとは違うのでしょうか。

祥介「良くも悪くも、何が違うかっていえば重さが違う。当時のコートはどれを着ても重いんだよ。でもこのトレンチ、肩章もベルトもない、珍しいデザインだな」

リバーシブルのコートは返しとバイカラーになり、しゃれたつくりだカーキのトレンチは赤い裏地が特徴

――欧州ではジャケットなどを親から代々受け継ぐ習慣があるといいますよね。

塁「祖父・謙介の遺品は服だけでマンションの6畳の部屋がいっぱいになるぐらい残っているんです。相当な服持ちでしたからね。山のようにジャケット、パンツがあります。僕は若い頃、その中から着たいものを選んでいました。今でも直して着てみたいモノがたくさんあります。実家に住んでいたときは、父と服を共有していたこともありました」

石津事務所に飾られた謙介さんの写真。ライフスタイルすべてがダンディーだった(東京都港区)