「Spotify presents Tokyo Super Hits Live 2020」に出演した嵐とPerfume。ライブイベントは約3時間に及んだ (写真/THINGS. 写真提供/スポティファイジャパン)

米グラミー賞の候補に選出されて話題となっている韓国のヒップホップグループBTS(防弾少年団)のように、世界市場に打って出たい――アニソンを中心とした日本の音楽は海外からも関心が高く、その市場の開拓は国内音楽産業の課題の一つとなっている。毎年秋になると開かれるのが、海外進出を目指すアーティストの見本市。各国からバイヤーが訪れにぎわうイベントなのだが、コロナ禍の2020年はネットに移行した。「目指せBTS」の第一歩はネット活用だ。

嵐やPerfume、End of the Worldなどによる約3時間のコンサートイベント――海外での活躍もにらむ7組が出演したオンラインライブは、米国や韓国、台湾、シンガポール、インドネシアなど日本を含め12の国・地域でも配信された。出演者らは英語で歌ったり、英語でMCをしたり……まさに“海外”を意識したライブ。ツイッターのトレンドでハッシュタグ「#tokyosuperhits」は日本1位、世界で4位となり、イベント特設サイトのアクセス数は2週間で約300万PV(ページビュー)に達した。

「オンラインの利点を生かした新しいライブイベントのやり方があるのではないか。日本のアーティストを世界に紹介し表現の場を提供することで、日本の音楽業界を活性化できるのではと考えた」と語るのは、このライブイベント「Spotify presents Tokyo Super Hits Live 2020」を企画した音楽配信サービス大手Spotifyの日本法人スポティファイジャパン(東京・渋谷)のコンテンツ部門を統括する芦澤紀子氏。韓国のBTSのように世界で活躍するアーティストを日本からも出したい――政府が掲げるクールジャパン戦略の下、日本のアーティストは海外にも活躍の場を求めてきたが、活躍しているアーティストとして関係者から名前が挙がるのはBABYMETALやONE OK ROCKといった一部にとどまる。

●海外で最も楽曲が再生された国内アーティスト(Spotify発表)

1.LiSA

2.RADWIMPS

3.ONE OK ROCK

4.米津玄師

5.久石譲

6.林ゆうき

7.Aimer

8.いきものがかり

9.TK from 凛として時雨

10.FLOW

●海外で最も再生された国内アーティストの楽曲(Spotify発表)

1.紅蓮華/LiSA

2.unravel/TK from 凛として時雨

3.シルエット/KANA−BOON

4.ブルーバード/いきものがかり

5.Tokyo Drift (Fast & Furious) − From “The Fast And The Furious:Tokyo Drift” Soundtrack/Teriyaki Boyz

6.ピースサイン/米津玄師

7.summertime/cinnamons,evening cinema

8.crossing field/LiSA

9.狂乱 Hey Kids!!/THE ORAL CIGARETTES

10.Black Catcher/ビッケブランカ

※Spotifyが発表した海外で聴かれた日本の音楽ランキング(2020年1月1日〜11月27日)

こうした海外展開を促進しようと経済産業省などが後押しして、毎年秋、コンテンツの見本市が開催されてきた。東京国際映画祭(TIFF)と併催される、コンテンツマーケットの「TIFFCOM」、「東京国際ミュージック・マーケット (TIMM)」などだ。このためにコンテンツ関係者が海外から来日するのが秋の恒例となっていたが、20年はリアル開催はできず、オンラインでの実施となった。

11月4〜6日に初めてオンラインで開催された17回目のTIMMでは、特設サイト「TIMM ONLINE」をつくり、ネットを通じたビジネスマッチングや音楽ビジネスをテーマの核としたセミナー、ショーケースライブなどが実施された。ライブもオンライン開催となり、『新世紀エヴァンゲリオン』のテーマ曲などを歌う高橋洋子やアイドルグループのFES☆ TIVEら15組が出演して3日間で延べ1万6000人が視聴した。

TIMMを主催する日本音楽産業・文化振興財団(JMCE)によれば、海外のバイヤーや出展者など約1000人の関係者が参加し、ビジネスセミナーの視聴回数が2500回を超えた。アーティストの海外プロモーションやライセンス商談などが活発に実施されたという。

従来は期間中に来日しなければならなかったが、オンラインなら気軽に参加できる。登録した海外のバイヤーにメッセージを送ったり、アーティストに興味を持ったバイヤーが担当者とコンタクトを取ったりできるシステムを独自に開発して、開催することにした。コンタクトを取った後の商談は、Zoom(ズーム)など他のコミュニケーションツールでそれぞれが進める。TIMMに登録したアーティストをジャンルなどから一覧できるページなどもつくり、バイヤーが好みのアーティストを探す“見本市感”を演出した。「独自システムなので、開催期間に左右されず、年間を通して利用できる」とJMCEの小峰明子氏。12月9日時点で247のアーティストが登録している。

TIMM参加者は、ショーケースライブのアーカイブ映像を20年12月31日まで見られた。商談が終わった後に懇親会をするといったリアルなコミュニケーションはできないが、時間に縛られないのがオンラインならではのメリット。「日本のアーティストに興味があるけど、わざわざ行くのはどうかと考える海外バイヤーの参加へのハードルも下がる」(小峰氏)。

TIMMでは、アーティストを探し、スタッフとコンタクトできるシステムを独自開発した(写真提供/JMCE)ユーチューブでも生配信したショーケースライブ。視聴者からのコメントも集まった(写真提供/JMCE)