バイクが「3密」を回避できる手段として見直されています。2020年の二輪販売台数(原動機付き自転車を除く)は前年比14%増の14万2000台。2年連続で前年を上回り、12年ぶりの高水準となりました。人気車種では納車に半年以上もかかるケースも出てきています。二輪車の運転免許証交付件数も20年に伸びています。警察庁によると大型二輪と普通二輪合計で24万4200件と前年比9.8%増でした。

■「原付2種」が人気に

人気の秘密を探りに「ホンダドリーム横浜緑店」(横浜市)に行ってきました。今人気になっているバイクが原付2種というジャンル。本田モーターサイクルジャパンの伊沢弘さんによると「原付2種は125CC未満のバイクで燃費が良く、乗り回しやすい」。原付1種に分類される50CCバイクで必要な交差点の二段階右折や速度30キロ規制がなく、スムーズに移動ができるところが人気の理由だそうです。なかでも20年6月に発売されたホンダの「CT125・ハンターカブ」は予約だけで年間販売目標の8000台を上回りました。ネットの口コミサイトでは「納車までに数カ月かかった」という書き込みが目立ちます。ホンダによると生産は計画通りできていたそうなのですが、アウトドアブームも追い風になり予想以上にオーダーが殺到したそうです。私も試乗しましたが、小回りが利き楽しいバイクでした。

2020年6月に販売開始した『ホンダCT125・ハンターカブ』

「CT125・ハンターカブ」の価格は44万円(税込み)です。このバイク、モデルとなったのは1980年代に発売されていた「CT110・ハンターカブ」。当時の価格は16万円程度でした。全般に新車のバイクは販売価格を比べると昔と比べて随分高くなっています。1つが環境規制の影響です。国内だけでなく世界的に環境規制が厳しくなっており、この対応費用が膨らんでいます。日本国内では段階的に排ガスや騒音規制が強化されています。安全装備も増えています。ブレーキ時の車体の安定性を高めるアンチ・ロック・ブレーキ(ABS)や操作系や燃料系の電子化も進んでいて、このコストアップ分が販売価格に反映されています。

新車ばかりでなく中古車も値上がりしています。新車が手に入りにくいだけに、すぐに購入できる中古が人気に。新車の納車が遅れた結果、下取りのバイクの発生が減少。生産中止になる人気車が増えているのも一因です。

■30年前の「名車」、2倍以上も

中古バイク買い取り・販売大手のバイク王&カンパニーによると2020年11月期通期の販売単価は前の年と比べ7.6%上昇しました。なかでも「絶版車」は大きく値上がりしています。ホンダの「CBX400F」(1981〜84年に製造販売)は当時の新車価格は約47万円でした。それが20年の平均成約単価は 119万9000円。私が学生時代、バイクの免許を取得するため通っていた教習所で乗っていた30年前のバイクが倍以上の価格で売れているんです。中古バイクの売れ行き好調を反映してバイク王は3月30日に業績予想を上方修正し、株価も上がっています。

中古バイクの値上がりをけん引しているのは、1980年代のバイクブームを経験した、50代以上を中心とする「リターンライダー」です。日本自動車工業会の「二輪車市場動向調査」によると、新車購入者の年齢は年々上昇し、 2019年度の平均年齢は54.7歳となっています。バイク王によれば中古車市場でも購入者の6〜7割を40〜50代が占めています。仕事に余裕ができ、子育ても一段落した層が再びバイクを楽しみ始めています。80年代のバイクブームの時には10代、20代と若かった人たちがお金や時間を使えることができるようになり、昔憧れたバイクを買い求めているようです。コロナで通勤スタイルの変化やメーカーの販売促進策もあり、バイクの快走は当面続きそうです。

(BSテレ東日経モーニングプラスFTコメンテーター 村野孝直)

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜から金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。