インド三井物産社長 ファイサル・アシュラフ氏

インド三井物産のファイサル・アシュラフ社長は、金属資源部門を振り出しに、社内向けの人材開発プログラムの策定や導入にも関わってきた。アシュラフ氏が一貫して強調するのは、多民族・多宗教国家であるインドで培った多様性が企業や組織の活力につながるとの思いだ。

――人材育成にも熱心に取り組んだそうですね。

「三井物産が2018年に世界中の優秀な外国人の人材を集めて、リーダーシップ育成のプログラムを始めました。私はシンガポールに駐在していたのですが、東京本社と共同で内容の策定に関わりました」

「三井物産の事業は多様で、グローバルに展開しています。私はこうした現地スタッフ向けのプログラムをもっと各国・地域で導入すべきだと考えました。そこで19年に中東三井物産の副社長としてアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに赴任した時に、事業計画を立案させるプログラムをつくりました。インドでの着任後も同様の試みをQSBC(四半期戦略ビジネス会議)として導入しています」

――どのようなプログラムなのですか。

「四半期に一度の開催で、参加者はチームで特定の事業で高いハードルを課す『ストレッチ目標』を設定します。その過程で事業が抱える課題や改善点を検討させます。ビジネススクールのケーススタディーなどとの違いは、三井物産が実際に手掛けている事業を題材とし、提案は当該部門の責任者とも擦り合わせる点です。実際に採用された案もあります。ビジネスを立ち上げていく自信をつけてもらいたいです」

――人材育成全般で重視しているポイントは。

「地域や事業部を超えた連携の実践です。積極的に『協働価値』を引き出して1+1を2より大きくしていきたいと考えています。QSBCプログラムでも多様な部門からの参加者によるブレインストーミングなどで、他の事業部との相互理解を促します」

「例えば、化学品部門と食料部門といった異なる事業部門がこうしたプログラムを通じて初めて『他部門はそんなことをやっているんだ』と相手を理解することで、自分の仕事にも生かせるようになるのです」

「インドにおいては消費者向けの市場の追求も意識させています。三井物産はインドでは工業関連の事業が中心でしたが、これからは消費者向けの分野にも事業領域を広げていきます。飲食では壱番屋と『CoCo壱番屋』(ココイチ)事業も展開していますが、さらに食品関連のビジネスを拡大させたいです」

事業計画を立案するQSBCプログラムで人材育成に取り組む(右端がファイサル・アシュラフ社長)