レジ前の平台に2冊並べて展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

本はリスキリングのちょっとした手がかりになる。NIKKEIリスキリングでは、ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチし、本探し・本選びの材料を提供していく。今回取り上げる書店は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店だ。来店客こそかなり戻ってきたが、ビジネス書の売れゆきは話題の新刊に恵まれないこともあって、回復の勢いに欠く。そんな中、書店員が注目するのは、ベストセラー『スマホ脳』の著者が脳と運動の関係をさまざまな科学研究をもとに解き明かした脳科学の本だった。

■『一流の頭脳』を加筆・再編集

その本はアンデシュ・ハンセン『運動脳』(御舩由美子訳、サンマーク出版)。ハンセン氏はスウェーデンの精神科医で、一般向けに医学研究や医薬品に関する情報を新聞や雑誌、テレビなどメディアを通じてわかりやすく発信し、特にテレビの科学番組の出演者として有名だという。日本では累計60万部を超えた2021年のベストセラー『スマホ脳』(新潮新書)の著者といえば、なんとなく知っている人もいるだろう。

本書は人口1千万人のスウェーデンで67万部以上売れたという大ベストセラーで、同氏を一躍有名にした出世作だ。日本でも18年にタイトルは『一流の頭脳』、著者名も英語読みのアンダース・ハンセンとして1度刊行されたが、『スマホ脳』にあやかってタイトル・著者名を変え、判型も単行本標準サイズの四六判から新書に近い小ぶりのB6変型判に変え、加筆・再編集して再び世に問うた。新たな読者をとらえようという版元のねらいはあたって、8月末の刊行以来、ベストセラーを快走している。

著者のメッセージは次の一言に要約できる。「身体を動かすことほど、脳に影響を及ぼすものはない」。運動が脳に及ぼす絶大な効果を紹介し、その理由についての説明も加えたのが本書だ。著者は新版刊行に寄せて「科学と事実がぎっしり詰まった読みもの」「同時に、わくわくしながら楽しんで読めるもの」にしたいと思ったと執筆時を振り返っている。脳と運動の関係を知り、自身の生活習慣を見直してみるには格好の一冊だろう。