かんぽ生命保険が全契約調査で顧客に回答を求めている返信用はがき

 保険の不正販売が相次いで発覚したかんぽ生命保険。8月から約3千万件ある全保険契約の調査に乗り出し、9月中に中間報告、10月から現在自粛している保険営業を再開する方針だ。ただ、重点的に契約内容を精査する「特定事案」から漏れる悪質な事例が多数あるなど、現場からは調査の不十分さを指摘する声が上がっている。

 かんぽ生命が不正が疑われると認定した特定事案には(1)7〜9カ月間、保険料を二重払いした(2)4〜6カ月間、無保険状態になった(3)保障内容が同じなのに乗り換え時に保険料が上がった−など六つの類型がある。対象は18万3千件(契約者数約16万人)。同社は顧客に郵送した書類で該当する類型を知らせ、後日、訪問や電話で契約状況を確認する。意向に沿わない契約だった場合、保険料の返還に応じるという。

 この方針に対し、複数の局員は「特定事案に含まれない、悪質な乗り換え契約がある」と口をそろえる。

 その一つが、新旧保険で被保険者を変える「ヒホガエ」と呼ばれる手口。被保険者を子や孫に次々と変えることで新規契約を装う方法だ。局員はより多くの手当金や実績を稼げるため同様の契約が相次ぎ、日本郵便は今年4月、こうした事例は新規と見なさないようルールを見直した。

 旧保険の満期を前倒しして契約を終了させ、新しい保険に加入させる「タンシュク」という手口も多い。いずれも顧客にとっては意味がない乗り換え契約で、保険料が上がるなど不利益を被る恐れがある。

 二重払いについても、支払期間が10カ月以上だった場合は「顧客の意向だった」と見なして特定事案の対象から外している。東北の局員によると、1年間、二重払いさせた契約が約50件あった局員がいたといい「より悪質なケースが特定事案から外れるのはおかしい」と指摘する。

 実際に調査に当たるかんぽ生命の社員によると、調査方法についての研修はなく「担当者によって判定結果が変わる恐れがある」。対象者の多くは高齢者のため、契約時の状況を覚えていなかったり、家族に知られるのを嫌がって調査を断ったりするケースも多いという。一部では「3回電話しても不在ならば調査完了でいい」との指示があり「公平な調査になっていない」と打ち明ける。

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 特定事案以外の契約者の調査についても「形だけの調査にすぎない」との批判が出ている。

 郵送される書面には「ご契約内容のご確認のお願い」とあり、必要に応じて同封はがきの返信を求めている。契約が自らの意向に沿っているかどうかを「はい」「いいえ」で答え、返信してもらう仕組み。返信がなければ調査対象から外れる。

 一連の不正販売問題では、一部の局員が相続税対策や貯金と誤認させて契約を結ばせるケースや、判断能力が乏しい認知症の高齢者を多額の保険に加入させるケースが明らかになっている。多くは契約者自身が不正に気付いていないとみられ、九州の局員は「簡単な郵送調査だけでは実態は分からない」と訴える。

 一部では不正が発覚しないよう顧客に口止めする局員も。複数の関係者によると、8月上旬、愛知県の局員が保険料を二重払いさせた顧客宅を訪れ「調査が入った場合、『うちは大丈夫です』と言ってください」と依頼し、5千円分の商品券を渡したことが発覚したという。関東の局員は「こんないいかげんな調査をしただけで、営業再開なんてあり得ない」と憤る。

 消費者問題に詳しい朝見行弘弁護士(福岡)は「アリバイづくりのための調査になっており、不正に気づかない高齢者は数多くいるはずだ。家族が契約内容を確認した方が良い」と話している。